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欠勤と代休は相殺できるか

弁護士 石居 茜 (ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.10.05

当社では、欠勤した場合の賃金控除の取り扱いについて就業規則に定めがないため、社員が欠勤しても給与を満額支給しています。現在年休を使い果たし、欠勤が今月だけで3日目になる者がいますが、その者は同月内で4日休日出勤しています。この場合、欠勤と代休を相殺しても問題ないでしょうか。また、相殺可能な場合、割増賃金分を支給しなくてもよいでしょうか。

労働者の同意を得ない限り相殺することはできません。仮に、労働者の同意を得て欠勤を休日労働に対する代休としたとしても、法定休日労働に対しては、割増賃金を支払わなければなりません。

1 欠勤の場合の賃金控除
 賃金とは、使用者が労働者に対し、労働の対価として支払うものですので、本来、労働者が遅刻、早退、欠勤等によって不就労の部分がある場合には、その部分に関し、使用者は賃金をカットして支払わないことができます(ノーワーク・ノーペイの原則)。

 しかし、労働契約において、月給制で賃金を支払うこととしていて、就業規則等で不就労部分の賃金控除を明確に定めていない場合、これまで不就労部分の賃金カットをしてこなかった場合には、不就労部分につき賃金をカットしないで月給を全額支払うとの労使慣行が成立しているといえ(このような不就労部分の賃金をカットしない月給制のことを「完全月給制」と呼ぶことがあります)、今更使用者が勝手にカットすることは、労働契約に反して許されないこととなるでしょう。

 設問の会社では、これまで、社員が欠勤しても給与を満額支給してきたとのことですので、会社が一方的に休日労働に対する代休と欠勤を相殺し、欠勤日の賃金をカットすることと同じ扱いをすることは許されないでしょう。

2 休日労働の賃金
 会社が一方的に欠勤と代休を相殺することはできないと言えますが、個別労働者の同意を得られれば欠勤をその後の休日労働の代休として扱うことも可能でしょう。

 もっとも、その場合でも、法定休日に労働をさせたことに関し、労働基準法上の割増賃金(労働基準法37条)を支払わなければなりません。

 すなわち、休日に労働をさせた後に代わりの休日を与える「代休」と、あらかじめ特定の日を休日として指定した上で、就業規則上休日とされた日を労働日に変更する「休日振替」では労働基準法上の扱いが異なるのです。

 つまり、会社は、労働協約や就業規則等の労働契約上の根拠に基づき、労働基準法上の1週1日又は4週4日(同法35条)の要件に適合するように、あらかじめ振替休日を特定の日に指定した場合には、休日労働は労働日の労働となるので、割増賃金の支払が必要となりませんが、「代休」の場合には、就業規則上定められた休日が休日たる性格を変更されないまま労働日として使用されたことになるので、会社は、割増賃金を支払わなければならないのです。

 しかも、事後振替の代休の場合、就業規則に代休取得の場合の、賃金の清算規定として、法定休日労働後、代休を与えられた場合には、35%の割増賃金を支払えば足りることを示す規定を入れておかなければ、会社は、代休と1.35倍の休日労働の割増賃金を合わせて負担しなければならなくなってしまうことに注意が必要です。

 なお、労働者が出勤したのが、労働基準法の基準を上回って与えている、いわゆる法定外休日の場合には、労働基準法上の制限はなく、欠勤を代休として扱っても割増賃金の問題は発生しません。

3 結論
 以上より、会社による、一方的な欠勤と代休の相殺はできませんが、個別の同意を得て欠勤を代休として扱ったとしても、設問の会社の社員が、法定休日に出勤した場合には、最低35%の割増賃金は支払う必要がありますし、就業規則に賃金の清算規定がない場合には、欠勤を代休として扱っても、結局法定休日労働に対して1・35倍の賃金を支払わなければならないでしょう。

 このように、現行法を前提とすると、欠勤と代休を相殺することは難しくなりますので、予防策として、就業規則等で、欠勤の場合の賃金控除の規定を置くべきでしょう。無断欠勤の場合には、減給処分として賃金カットを行うことも考えられますが、その場合にも、労働基準法上、減給の幅は1回の額が平均賃金の1日分の半分までとされていること(労働基準法91条)に注意が必要です。

 また、代休を与えた場合に、割増賃金だけ支払えば済むようにするために、就業規則等に、代休取得の場合の賃金の清算規定を入れておくべきでしょう。

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