法律Q&A

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社員の採用業務を外部に委託することができるか

弁護士 石居 茜 (ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.09.05

社員を新たに採用する場合には、募集・選考・採用試験・面接などの段階を経て採用に至るわけですが、このような採用業務を外部に委託すると職安法の「委託募集」に抵触するのでしょうか。また、外部委託が認められる部分があれば、教えてください。

採用業務の外部委託は「委託募集」であって厚生労働大臣等の許可を受けることが必要ですが、委託した募集・採用業務が実質的に職業紹介にあたる場合には、受託者が職業紹介事業の許可を受けていればよいでしょう。

1 委託募集の許可
 職安法は、労働者募集については当事者間の私的自治に委ねる立場から、原則自由としていますが、労働者募集を第三者に委託する場合には、その適格性を事前にチェックするため、許可制をとっています(職業安定法第36条1項、同法第60条、同法施行規則第37条1項3号)。

 従って、労働者の募集・選考等の採用業務を外部に委託したいのであれば、労働大臣又は就業地を管轄する都道府県労働局長の許可を受ける必要があり、募集主及び募集受託者がそれぞれ委託募集の許可基準を満たすことによって許可されます。

 委託募集の許可基準としては、募集主、募集受託者がそれぞれ職業安定法その他の労働関係法令に係る重大な違反がないこと、募集に係る労働条件が適正であること、募集に係る業務内容、労働条件が明示されていること等が必要となります。

 以前は、委託募集は、法律に基づいて設立された団体(中小企業協同組合等)に所属する事業主が、その所属する団体を通じて労働者の募集を行う場合に限り許可されていましたが、平成11年の職安法改正に合わせ、委託募集の主体の要件は緩和され、一定の団体でなくても募集受託者として許可を受けることができるようになりました。

 委託募集の主体的要件は緩和されたわけですが、実際に許可を受けて委託募集を行っているところは一部の業種に限られているようです。

 また、募集主が募集受託者に報酬を与えるのであれば、報酬額についてあらかじめ労働大臣又は都道府県労働局長の認可を受ける必要があります(職安法第36条2項)。

2 職業紹介事業について
 求人者と求職者をあっせんする職業紹介事業についても、有料の場合は一定の職業(港湾運送業務等厚生労働省令で定める職業)については認められませんが、厚生労働大臣の許可を受けて行うことができます(職安法第30条、33条)。

 求人者に紹介するため求職者を探索した上、当該求職者に就職するよう推奨し、これに応じて求職の申込をした者をあっせんするいわゆるスカウト行為を事業として行う場合は、職業紹介の実態に該当することが通常であるので、職業紹介事業として許可を取得している人材スカウト型職業紹介事業者に募集を委託する場合には、当該職業紹介事業者に求人を申し込んだものと解することが適当であって、委託募集の許可は基本的には不要です。

 東京エグゼクティブ・サーチ事件最高裁判決(最判平成6年4月22日、民集48巻3号944頁)も、人材スカウト行為は職業安定法5条1項にいう職業紹介におけるあっせんにあたるとしています。

 また、求職者の採用を行うのは求人者であり、職業紹介事業者が採用内定まで行うことは職業紹介事業に含まれないため認められませんが、職業紹介事業者は、職業安定法第5条の7により、求人者の雇用条件に適合する求職者を紹介する必要がありますので、採用予定者の絞込みを職業紹介事業者が行うことは、職業紹介の一環として可能です。

3 結論
 結論としては、社員の募集・選考等の採用業務を外部に委託することは職安法上の「委託募集」となり、労働大臣又は都道府県労働局長の許可を受けなければならないでしょう。

 ただ、あくまでも会社が募集・選考は行うとして、例えば採用試験の問題作成、実施等を外部に委託するだけであれば、事業主以外の第三者が募集したとまではいえず、「委託募集」とはならないでしょう。

 また、許可を得て職業紹介事業を行う業者に募集を委託し、当該職業紹介事業者が求職者を募り、紹介をされた場合には、職業紹介にあたるので、「委託募集」の許可は基本的には不要です。

 そして、職業紹介事業者に募集を委託した場合には、職業紹介事業者が採用内定まですることは認められませんが、会社に適格な人材の絞込みを当該事業者に委託することは、職業紹介事業の範囲として適法といえるでしょう。

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