法律Q&A

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派遣労働者と裁量労働制

弁護士 村林 俊行(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.09.05

このほど、システム部門において半年程度の開発プロジェクトが立ち上がりました。その応援にプログラマーの派遣労働者を数人採用しようと考えています。当社のシステム部門のSEやプログラマーは、全員裁量労働制の適用者となっており、かないフレキシブルに業務を行っています。そこで、今回採用する派遣労働者にも裁量労働制を適用したいと考えますが、問題はないでしょうか?

派遣労働者にも裁量労働制を適用することができます。

1 裁量労働制について
 裁量労働制とは、一定の業務について実際に労働した時間数ではなく、労使協定又は労使委員会の決議で定められた時間数だけを労働したものとみなす労働時間制をいいます。そして、この裁量労働制には、命令で定められた専門的な業務を対象とした専門職裁量労働制(労基法38条の3)と、本社等の企画業務等を対象とした中枢部門ホワイトカラー裁量労働制(労基法38条の4)があります。このような裁量労働制は、近時におけるめざましい技術革新に伴う情報化やサービス化、企業における中枢スタッフにおける処遇の合理化等に対応するために制度化された制度です。
2 派遣労働者をめぐる法律関係ついて
 労働者派遣における法律関係は、[1]派遣元と派遣労働者との間に雇用関係があり、[2] 派遣元と派遣先との間に労働者派遣契約が締結され、この契約に基づいて派遣元が派遣先に労働者を派遣し、[3]派遣先は派遣労働者に対して指揮命令を行うという関係です。それゆえ、労働者派遣は、労働者と派遣先との間で雇用関係がない点で出向とは異なります。
3 派遣労働者と裁量労働制について
 派遣労働者と派遣元との間においては、両者は雇用関係にあることから、事業場の労使協定等の一定の要件を満たせば裁量労働制を採用することはできます。しかし、派遣労働者が実際に働くのは派遣先であることから、派遣先において実際に派遣先が派遣労働者に対して指揮命令をするためには、派遣元と派遣先との間において労働者派遣契約を締結する必要があります。そして、労働者派遣契約においては、法律上、派遣労働者が従事する業務の内容等の他に始業・就業の時刻を記載することが要請されています(労派遣法26条1項、労派遣則22条等)。  従って、派遣労働者に対しては、[1]派遣元において労基法38条の3所定の裁量労働制の諸要件を満たし、[2]派遣元において労使協定の内容を対象労働者に関する労働協約、就業規則又は個別労働契約において具体化し、[3]派遣先と派遣元との労働者派遣契約において裁量労働制を採用することが規定されていれば、派遣先において派遣労働者に対して裁量労働制を採用することも可能となります。
4 出向社員と裁量労働制について
 ちなみに、出向社員についても出向先企業において事業場の労使協定等の一定の要件を満たせば裁量労働制を採用することは可能です。その場合には、出向元企業の出向規程に労働時間に関する出向先企業と出向元企業との就業規則の適用関係(例えば、出向先企業の就業規則を優先する旨の規定)を規定することが適切です。そして、出向先企業と出向元企業との出向協定により出向元企業の出向規程の内容を変更する場合には、出向時に労働者に対してこれを書面で説明し、個別同意を取得しておくことが適切でしょう。
5 本設問について
 この点貴社においては、システム部門における開発プロジェクトを行う上でのSEにつき裁量労働制を採用しようとしており、対象業務は専門職裁量労働制にいう「情報処理システムの分析または設計の業務」に該当します(労基法38条の3第1項、労基則24条の2第2項2号)。それゆえ、貴社においては、[1]派遣元において事業場の労使協定において労基法38条の3第1項所定の事項を定め、[2]派遣元において労使協定の内容を対象労働者に関する労働協約、就業規則又は個別労働契約において具体化し、[3]貴社と派遣元との労働者派遣契約において裁量労働制を採用することを規定すれば、貴社において派遣労働者に対して裁量労働制を採用することも可能となります。

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