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社員に対して裁判所の差し押さえ命令が出た場合、どう対処すればよいか?

弁護士 小林 昌弘(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.09.05

先日、裁判所から、当社の社員の賃金に対する差し押さえ命令が出されました。会社としては命令に従わざるを得ないと考えますが、具体的にどう対処すべきでしょうか。また、賃金額のうち4分の1までしか控除できないということですが、賃金控除の協定は必要ないのでしょうか。

賃金の額面額から給与所得税の源泉徴収・地方税・社会保険料を控除した手取額を基準にして、月額の手取額の4分の1(手取額が28万円を超えるときは手取額から21万円を控除した額)について、一定の場合に応じて、供託するか差押債権者に対して直接支払うことになります。この手続自体に関しては賃金控除の協定は必要ありません。
そして、残額の中から、貴社の通常の賃金支払の場合と同様に、給与所得税の源泉徴収・地方税・社会保険料等を控除した額を社員に支払うことになります。

1. 賃金直接払いの原則との関係
(1)原則の内容
 賃金は直接労働者(社員)に支払わなければならないとされています(労働基準法24条1項)。

(2)賃金債権が差し押さえられた場合
 しかし、賃金債権が差し押さえられた場合は賃金直接払いの原則には抵触しないものとされています(民事執行法155条、昭25・8・4基収1995号参照参照)。

2. 差押債権者に支払うべき額
 ただし、債務者の生活保障という観点から、差押可能な額が限定されています。その額を決める際も、債務者の生活保障という観点から、賃金の額面額から給与所得税の源泉徴収・地方税・社会保険料を控除した後の手取額を基準にすることとされています。

 具体的には、月額の手取額の4分の1(手取額が28万円を超えるときは手取額から21万円を控除した額)が差押可能な額とされています(同法152条1項、同法施行令2条1項)。例えば、月額の手取額が20万円であればその4分の1の5万円が、40万円であればそれから21万円を控除した残額19万円が差押可能な額となり、この額については差押債権者に支払うべき分となります(深沢利一著「民事執行の実務(中)増補版」新日本法規出版375頁)。

 なお、上記の基準に従うと社員の生活が困窮するなどの事情がある場合は、社員は差押禁止範囲の変更の申立てができる場合があります(民事執行法153条1項)ので、その旨を社員にアドバイスしてあげると良いでしょう。

 したがって、その差押可能な額を法務局に供託するか(同法156条1項。ただし複数の債権者の差押命令が届いたときは義務的に供託しなければなりません(同条2項))、原則として債務者(差押えを受けた社員)に差押命令が送達されてから1週間を経過したときは差押債権者に直接支払うことができます(同法145条3項4項、155条1項)。

 そして、残額の中から、貴社の通常の賃金支払の場合と同様に、給与所得税の源泉徴収・地方税・社会保険料等を控除した額を社員に支払うことになります。

3. 賃金全額払いの原則との関係
(1)原則の内容
 また、賃金は全額を労働者(社員)に支払わなければならないともされています(労働基準法24条1項)。

(2)賃金債権が差し押さえられた場合
 しかし、賃金債権が差し押さえられた場合は、この原則には抵触しないものとされています(民事執行法152条1項及び同法施行令2条1項参照)。

 したがって、「賃金債権が差し押さえられた場合には、賃金の4分の1を控除した額を支給する」というような協定は必要ありません。

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