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組合員への情報提供を行うため、労働組合に会社のホームページを使用させることは不当労働行為となりますか?

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.09.05

組合員への情報提供を行うため、労働組合に会社のホームページを使用させることは不当労働行為となりますか?

1 便宜供与と労働組合法
 わが国で主流を占める企業別労働組合において、その組織を維持・強化し活動を存続させる為には、使用者から企業施設利用その他の便宜等を受ける高度の必要性が認められており、わが国の多くの企業では、使用者が、施設管理上、労務指揮上・労務の需給上・対価上及び事務処理上自己の負担をもって組合活動に便宜を与えることが許容されていますが、これを便宜供与といいます。

わが国の判例で問題となった例として、組合休暇・チェックオフ・在籍専従の各制度や組合事務所や組合掲示板の各使用等が挙げられますが、労使双方の合意や就業規則あるいは慣行上の制度として成立していれば、適法と解されております。
わが国の労働組合法においては、このような便宜供与の有用性を認めこれを一般的に禁止しておりませんが、一方で、便宜供与の行き過ぎは、使用者に組合に対する支配介入を招き、組合を御用組合化しその使用者に対する影響力を相対的に弱体化せしめることを懸念し、そのような行き過ぎた便宜供与行為は支配介入行為として不当労働行為として禁止されています(労組法7条3号)。

2 ホームページと施設管理権
 本事例において参考になるのは、同じ目的の為になされる組合掲示板の使用関係に関する判例です。

組合掲示板貸与に際し、使用者が掲示事項の事前許可制と掲示物の届出、使用者の施設内でビラ等を配布しない及び使用者の施設を利用しまたは構内で政治活動は行わない等の条件と付したところ、一方の組合はこの条件を受け入れたにもかかわらず、残りの組合がこれを受け入れなかったという事案(日本チバガイギー事件・最判平成元年1月19日・労判533号7頁)において判例は、[1]掲示板を貸与するか否かは便宜供与の問題であり使用者が貸与する義務を負うものではなく、使用者が貸与条件を付することはなんら不当ではない。[2]社内に存在する複数労働組合に同じ条件を提示したのであれば、その対応が個々の組合で異なったとしても、使用者が当該条件を一方組合の弱体化を意図して付したというような特段の事情がない限り、そのような行為は当然には不当労働行為にはならないとしました。[1]につきましては、使用者が施設管理権を有していることとそもそも就業規則で使用者の施設内でのビラ配布行為が事前許可制となっていること及び元来職場は職務遂行の場所であり企業施設は従業員の指摘活動の為の場所ではないこと等を重視しており、ホームページは会社が管理権を有する会社の物的施設であるということが十分可能であることから、本事例も当該判例と同様に考えることは十分に可能と考えられます。

但し、本判例が掲示物の全面許可制、ビラ配布の一律禁止という条件付与行為を不当労働行為に該当しないと判断したことに関しては、従前の最高裁判例(日産自動車組合事務所事件・最判昭和62年5月8日労判496号6頁)との整合性に関し学説からは強い疑問の声が上がっている点には十分注意すべきでしょう。

3 結論
 以上を踏まえますと、本事案において、会社が労働組合との合意に基づき会社のホームページ上に労働組合の情報を掲示することは、便宜供与行為して法律上許されることは明らかですが、その際に、便宜供与の目的を逸脱するような条件(例えば、「会社に不都合な情報はこれを抹消できる」等)を付したり、労働組合は複数存在するのにその条件内容を同一にしなかったり、あるいは一部の組合には条件を提示しなかったりすることは、支配介入あるいは差別的取扱いとして不当労働行為となる可能性が高いので留意すべきでしょう。

最後に、このようなホームページ上における労働組合に対する掲示板の貸与内容につき明示の定めをしていない場合、将来ある時点においてこの取扱いを会社側の都合で中止したくともその貸与中止行為自体が労働組合に対する支配介入行為と評価され不当労働行為となる可能性がありますので、会社としては、労働協約等で貸与期間等につき明示の定めをもうけておくことが不可欠と考えられます。

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