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退職金制度変更による社内積立制度は違法か

弁護士 石居 茜(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.07.18

当社では、現在退職金制度の見直しを検討しています。その内容は、社員に月例給与の3%を積み立させ、勤続3年以上で退職、あるいは死亡した場合、積み立てた金額に会社が別途積み立てた原資から在職年数に応じて一定金額を付加する積立制度です。しかし、制度自体は社内預金に当たり違法なのではないかとの指摘も社内から出ています。このような退職金の積立制度に法的な問題はありますか。

社内預金にあたる可能性があります。その場合、当該制度を実施するには、労働基準法18条2ないし5項の要件を満たす必要があり、労働者の任意でなければ積み立てさせられないでしょう。また、賃金控除のための労使協定も必要となるでしょう。むしろ、外部積立である企業年金制度の導入を検討したほうがよいでしょう。

1 任意貯蓄金管理の規制
 労働基準法18条1項は、労働契約に付随して、貯蓄契約又は貯蓄金を管理する契約を労働者に強制することを禁じています。労働契約に付随しての強制貯蓄契約を認めると、貯蓄契約が労働を強制させることになったり、会社が経営不振の中、預金が返還されない危険を労働者が負うことになるからです。

 企業内において行われる積立金制度が本条に抵触するかどうかは、それぞれの制度の目的、内容、運用の実態、積立金に係る権利関係等から実質的に判断されます。

 たとえば、労働者全員に拠出が義務付けられていても、それが労働者相互の共済活動の掛金としての性格を持ち、個々の労働者がこれにより拠出額以上の給付を受けたり、全く給付を受けないような制度の下で会社が掛金の管理を行っている場合は、本条の強制貯蓄には該当しないとされていますが、本件のような、労働者の毎月受け取るべき賃金の一部を積み立てたものを財源の一部として行う退職金制度は、傷病者に対する見舞金や結婚祝金等の特殊の出費について労働者相互が共済し合う共済組合の掛金とは異なり、労働者の金銭をその委託を受けて保管管理する貯蓄金と考えられるので、労働者がその意思に反してもこのような退職積立金制度に加入せざるを得ないようになっている場合は、本条の禁ずる強制貯蓄に該当するとされています(昭和25年9月28日基収2048号)。

 従って、本件の退職金積立制度も社内預金にあたり、実施するためには、任意貯蓄金管理として、労働基準法18条2ないし5項の定める、[1]労使協定の締結および届出、[2]貯蓄金管理規程の制定、[3]一定利率の利子の付与、[4]返還請求への応諾という4つの要件を満たした上で、あくまでも任意で積み立てる必要があると考えます。

 さらに、会社は、社員ごとの毎年3月31日における受入預金額につき、その払戻債務を銀行その他の金融機関において保証することを約する契約の締結、その他当該受入預金額の払戻の確保に関する措置を講じなければなりません(「賃金の支払の確保等に関する法律」3条)。

2 賃金控除
  設問の退職金積立制度は、社員の月例給与の3%を控除して積み立てさせるものですので、賃金の全額払の原則との関係で問題が生じ、賃金控除の労使協定が必要となります(労働基準法24条1項)。

 また、これまでの退職金制度を変更して、社員の拠出で退職金の原資を積み立てる制度に移行する場合、労働条件の不利益変更の問題も生じる余地があります。

3 企業年金制度の利用
 むしろ、退職金制度の見直しを図るのであれば、外部積立ではありますが、企業年金制度の導入を検討したほうがよいと思われます。

 企業年金制度にはいろいろありますが、それぞれ税制上の優遇措置がなされています。厚生年金基金制度、確定給付企業年金制度は従業員拠出で実施することも可能です。

 もっとも、厚生年金基金制度、規約型および基金型の確定給付企業年金、企業型の確定拠出年金制度を実施する場合には、労使合意が必要となります(厚生年金基金は、厚生年金保険の被保険者の2分の1以上の同意、及びその事業所に使用される被保険者の3分の1以上で組織する労働組合があるときはその同意が必要ですし、規約型及び基金型の確定給付企業年金、企業型確定拠出年金は、その事業所で使用される被用者年金被保険者等の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、そのような労働組合がないときには当該被用者年金被保険者等の過半数を代表する者の同意が必要です)。

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