法律Q&A

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社内不倫を理由に解雇できるか

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2005.07.08

当社のある女性社員が,別の職場の妻子ある男性社員と不倫関係にあることが発覚しました。周囲のうわさにより会社の知るところとなったもので,社員への影響を考えても,組織として看過できないものと考えます。そこで,なんらかの処分に付したいと思いますが,下記の点についてご教示ください。
 [1] 人事部として干渉することができるか。
 [2] 不倫を理由として両者を解雇できるか。
 [3] 一方を解雇,一方を配転というように,処分に差を設けることはできるか。
 (大阪府 N社)

[1]社内不倫によって、夫婦間のトラブルが社内に持ち込まれて、職場でいわゆる愁嘆場が再三に亙って演じられるなどの社内秩序に具体的な侵害があった場合には、人事部としても、干渉は可能です。しかし、干渉の仕方等によっては、逆に、性的噂への対応不十分を理由に環境型セクハラとして、あるいは、その噂の原因が人事情報の漏洩から起こったような場合には、個人情報保護法違反やプライバシーの侵害の問題を起こす危険もあります。

[2]上記[1]の前段のような事態を招きそれが深刻かつ修復困難な場合以外は両者の解雇は困難です。

[3]一方を解雇,一方を配転というように,処分に差を設けることは、そのような関係に陥らせた経緯から積極的に動いたか否かや、セクハラ的要素の有無等での差異をつけることは許されますが、性別の違いのみで差を付けることはできません。

1 私生活上の行為に対する懲戒処分について判例は慎重
 設問のような従業員のいわゆる不倫行為自体は、それが、セクハラなどに該当しない限り、私的な行為となります。そこで、最高裁が私的な行為を理由とする懲戒処分について示している一般的な判断基準を挙げておきます(以下につき拙著「実務労働法講義」280頁以下参照)。即ち、[1]国鉄中国支社事件(最一小判昭和49・2・28民集28巻1号66頁)で、従業員の職場外の職務遂行に関係のない行為であっても、企業秩序に直接関連するもの及び企業の社会的評価を毀損するおそれのあるものは企業秩序による規制の対象となるとしていますが、[2]横浜ゴム事件(最三小判昭和45・7・28民集24巻7号1220頁)で、行為の態様、刑の程度、職務上の地位などの諸事情を考慮するとし、[3]日本鋼管事件(最二小判昭和49・3・15民集28巻2号265頁)では、「従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない」と指摘しています。
2 不倫者の地位や会社の業種等に応じた対応の必要
 これらの判例を踏まえて、社内不倫について検討すると、形式上は、企業外での不倫とは異なり、多くの企業の就業規則に記載されている、「社内の秩序、風紀を乱し、または乱すおそれのあったとき」などの就業規則の懲戒事由の適用が考えられます(男女のトラブルに関して、形式上は、この懲戒理由ありとされた豊橋総合自動車学校事件・名古屋地判昭和56・7・10労判370号 42頁等)。あるいは、いわゆる不倫事体が、「特段の事情のない限りその妻に対する不法行為となる上、社会的に非難される余地のある行為」として「素行不良」に該当するとされたこともあります(繁機工設備事件・旭川地判平成元・12・・27労判554号17頁)。

 勿論その認定には密室内での男女2人のみが知る世界でのことのため、セクハラ事件における事実認定同様の困難が伴い(同意の下での性的関係につきセクハラを認めた和田勉事件・東京高判平16.8.30判時1879号62頁等参照)、そもそも解雇等の前提としての不倫乃至レイプ、セクハラ等の行為が認定されず、処分が無効とされ、処分をした使用者に損害賠償が認められる場合もあります(ケイエム観光事件・東京高判平成7・2・28労判678号69頁)。しかし、社内不倫等の事実が明らかに認められた場合であっても、実際の処分の選択においては、慎重を期する必要があります。例えば、社内不倫によって、夫婦間のトラブルが社内に持ち込まれて、職場でいわゆる愁嘆場が再三に亙って演じられるなどの社内秩序に具体的な侵害があった場合は別として、社内不倫だけを理由として懲戒解雇にするのは無理です。このことは、男性に対しても(前掲・豊橋総合自動車学校事件も懲戒解雇は重すぎ無効としている)、女性に対しても(社内不倫理由の懲戒解雇が無効とされた前掲・繁機工設備事件)、同様です。

 裁判例では、「社内の秩序、風紀を乱した」との就業規則の規定は、「企業運営に具体的な影響を与えるものに限る」として、社内不倫自体は、水道工事業の有限会社の経理事務担当の当該女性労働者の「地位、職務内容、交際の態様、会社の規模、業態等に照らして」「職場の風紀・秩序を乱し、その企業運営に具体的な影響を与えた」とは言えないとされています(前掲・繁機工設備事件。但し、妻子ある教師が教え子の母親と不倫関係に陥った白頭学院事件・大阪地判平成9・8・29労判825号40頁では、生徒への影響、学校の名誉を毀損する行為として懲戒解雇が認められています)。

3 性的噂への対応不十分によるセクハラや個人情報保護法との関係
 なお最近のこの種の事案への対応上の留意点として、次の2点を指摘しておきます。先ず、前述のような社内での混乱の有無に拘わらず、社内で不倫の噂が流れていること自体が、環境型セクハラの典型例とも言え、それを放置しておくことがセクハラとされる場合があります。次に、社内不倫の噂の原因が、人事部の把握している休暇届等の情報漏えいに基づく場合には、個人情報保護法違反やプライバシー侵害の問題を提起する場合があるということです。

 そして、設問の会社の契約社員にも、特に除外規定がない場合、同社の就業規則が適用されますし、退職日を自ら選択できない定年退職者についても支給日在籍要件を適用することを認める判例があることを考慮しますと、設問のように7月から1年間雇用している契約社員に年1度しか賞与を支給しない措置が直ちに違法とはいえないでしょう。

 しかし、会社の都合によって7月から1年間雇用したという側面も否めず、他の契約社員と雇用時期によって差が出てくるのであれば望ましい措置とはいえません。

 そこで、紛争を避けるためには、賞与支給対象期間の全部又は一部について勤務したが支給日前に辞めた者については、その勤務時間などに応じて日割計算などの方法により賞与を支給する制度を明確に定めるか、就業規則の支給日在籍要件は契約社員等については除外する規定を設けるなどの措置を取ることが望ましいでしょう。

4 具体的処分等の対応策
 結局、社内不倫自体に対しては、口頭の指導・注意や、不倫行為への警告書に止め、処分なしか、処分するとしても、一般的な処分の程度としては、「けん責、減給、出勤停止、懲戒休職」などの範囲内の軽度の処分に止めるのが賢明なところでしょう。しかし、セクハラ問題などに発展した場合には、その内容や被害女性の対応により、出勤停止以上のより厳しい処分が適当と考えられます。

そこで設問には上記回答のように解されます。

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