法律Q&A

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振替休日を再度振り替えることは可能か

弁護士 木原 康雄(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2020年4月掲載

当社では、休日に出勤する場合、事前の振り替えを原則としています。また、労働組合との時間外協定により、休日出勤は、所定休日も法定休日も区別なく割増賃金を支払う取扱としています。そこで、お尋ねですが、いったん振り替えた日に出勤せざるを得なくなった場合、再度の振り替えを行う取り扱いは妥当でしょうか。また、振り替えた日に出勤した場合、割増賃金の支払いは必要でしょうか。(栃木県 K社)

週1日(または4週4日)の休日が確保されていれば再度の振り替えも可能ですが、慎重な配慮が必要です。振替により勤務日となった日(当初の休日)に勤務しても休日労働とはならず、休日労働としての割増賃金の支払いは不要ですが、振り替えた日は休日となるので、この日に勤務すれば休日労働としての割増賃金の支払いが必要となります。再度振り替えた場合も同様です。

1 休日振替の可否

[1]事前の振替
 就業規則において休日と定められている特定の日を指定して、これを労働日に変更し、代わりにその前後の労働日たる特定の日を休日に変更すること(事前の休日振替)は、突発的な受注への対応など、業務上の必要からしばしば行われています。
 このような事前の休日振替は、労働者との間の労働契約で定められた休日を他の日に変更することになりますから、就業規則や労働協約などにより、業務上必要があるときは休日振替ができること、およびその事由・方法が規定されているか、または、労働者の個別の同意(鹿屋市立小学校教職員時間外手当等請求事件・鹿児島地判昭48・2・8判時718号104頁)が必要になります。
 休日の事前振替が行われると、当初の休日は労働日となり、振り替えられた勤務日は休日となります。したがって、振替により勤務日となった日(当初の休日)に勤務しても休日労働とはなりませんが(昭23・4・19基収1397号、昭63・3・14基発150号・婦発47号)、代わりに休日となった日(本来労働日であった日)に勤務すれば、休日労働となります。
 ただし、振替対象の日が法定休日の場合には、週1日(労働基準法35条1項。同条2項の変形週休制を採っている場合は4週4日)の休日を確保しなければならないという要件を満たす必要がありますので、振替の際には注意が必要です。

 [2]法定外休日の振替
 他方、振替対象の日が法定外休日の場合には、同一週内(変形週休制の場合は4週間以内)の振替などの制限はありません。また、振替休日を与えるかどうかも、労使で自由に決めることができます。

 [3]事後の振替(代休)
 なお、本ケースのような事前の休日振替ではなく、事後の振替(休日に労働させた後に代休日を与える場合。事前の休日振替とは異なります)についても、事前の振替と同様、就業規則・労働協約等の根拠規定、または労働者の個別の同意があれば可能ですが、この場合には、単に休日に労働させただけで、休日自体が変更されたわけではありません。
 したがって、労働基準法上は、代休日を与える必要はありません。また、代休日を与える場合も、前記週1日(または4週4日)の休日の制限は関係ありません。

 2.再度の振替の可否
 では、一度振り替えられて休日となった日に、また勤務の必要が生じた場合、再度休日の振替を行うことができるのでしょうか。
 この点に関しては、労働基準法上でルールが明確に定められているわけではありません。したがって、週1日(または4週4日)の休日が確保されていれば、再度の振替も直ちに違法となるわけではないと考えられます。
 もっとも、「労働者が労働から解放される日の確保」という休日の特定の趣旨からすれば、安易な再振替は避けなければなりません。
 そこで、当初の振替の際には予想できなかった、真にやむを得ない臨時的な業務の必要性が新たに生じた場合でなければ、再度の休日振替は、権利濫用との評価を受ける可能性があると考えるべきでしょう。
 また、前記のとおり、就業規則や労働協約に定めがあれば、振替につき、労働者による個別の同意は原則として不要ですが、再度の振替の場合には、労働者の個別同意を条件とするなどの慎重な配慮が必要と考えられます。

 3.割増賃金の支払いの要否
 [1]事前の振替の場合
 前記のとおり、「事前の休日振替」がなされると、当初の休日が労働日となり、代わりに振り替えられた勤務日は休日となります。したがって、振替により勤務日となった日(当初の休日)に勤務しても休日労働とはなりませんので、休日労働に関する36協定の締結や休日労働としての割増賃金を支払う必要はありません(三菱重工業横浜造船所事件・横浜地判昭55・3・28労判339号20頁)。再度の振替を行った場合も同様です。
 ただし、本来の休日を労働日として労働させたことにより、1週の労働時間が40時間を超えた場合は、超えた部分は時間外労働となりますから、時間外労働に関する36協定および時間外労働としての割増賃金の支払いが必要になります(昭22・11・27基発401号、昭63・3・14基発150号)。
 もし振り替えた日(当初の勤務日)に勤務した場合は、その日は休日となっていますので、休日労働に関する36協定の締結及び休日労働としての割増賃金の支払いが必要です。また、再度振替を行った場合も、再度振り替えた日は休日となっていますので、この日に勤務をすれば、休日労働としての割増賃金の支払いが必要となります。

 [2]事後の振替(代休)の場合
 「事後の振替(代休)」においては、前記のとおり、休日自体を変更したわけではなく、あくまで休日に労働したことになりますから、この場合には、休日労働としての割増賃金を支払う必要があります。

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