法律Q&A

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自宅から離れた病院からの出勤途中の通勤災害

社会保険労務士 深津 伸子(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2006.01.30

別居している家族が病気にかかり,看護のために自宅から離れた実家に泊まり込んでいる社員がいます。また,近々その家族が入院するため,病院に泊り込みの付き添いも必要になるようです。こうした場合,実家や病院からの通勤途中の負傷は通災になるのでしょうか。
(大分県 О社)

家族の看護のために実家や病院に泊まりこむことは、社会慣習上、通常行われることであり、必要性もあると考えられます。さらに、長期間継続して寝泊りしていたとの事実があれば、通勤途中に負傷を負った場合は、通災となるでしょう。

1 通勤災害の概念
 「通勤災害」とは「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」であり(労災保険法7条1項2 号)、労災からの保険給付の対象となります。「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」である「業務災害」とは保険事故としての性質が異なり、例えば業務災害の場合は、事業主に災害補償責任があるとして休業補償給付の待機期間である休業最初の3日間、事業主が休業補償を行わなければならないのに対して、通勤災害の場合はこの義務が存在しません。このような違いが若干あるものの、通勤災害もほぼ業務災害と同様の保険給付がなされます。

 では、通勤災害とはどのような概念なのでしょうか。まず、「通勤」とは、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものは除かれます(同条2項)。「通勤による」とは、通勤に通常伴う危険が現実化したと認められる場合をいいます。通勤途上の交通事故や落下物による負傷などがこの典型例です。また、「住居」とは、労働者の就業の拠点となる居住場所を指します。本件の問題点は、「実家」及び「病院」が住居といえるかにあります。

 私的生活関係の中心から切り離された起居の場は、原則として住居とは認められませんが、これを私生活の中心から一時的に移動することに、社会的に相当な理由がある場合には、住居と認められます。これには長時間残業等業務上の事由にもとづく場合のほか、家族の入院看護の必要というような私生活上の事由もふくむと考えられます(昭52.12.23基発981号)。

2 「実家」や「病院」が住居と認められた例
 自宅以外の起居の場が、就業のための拠点となるところと認められた事例があります。例えば、看護婦である被災労働者が長女の出産に際し、その家族(長女の夫と孫)や産褥などの世話をするために長期間(15日間)継続的に長女宅に泊まり込み、長女宅から勤務先に出勤する途中で、凍結した道路に足をとられて転倒し頭部に受傷したというものがあります。これは長女宅が住居と認められ、通勤災害とされました。また、「病院」が「住居」と認められた例として、入院中の夫の看病のため、母親と交代で1日おきに長期間病院に寝泊りし、その病院から徒歩で出勤する途中で、凍結した道路に足をとられて転倒し尾骨部打撲の傷害を負ったものがあります。

 いずれも判断のポイントは、寝泊りした行為が、社会生活上の必要性があったことや社会習慣上通常行われることであったこと、かつ、長期間継続して寝泊りしていた事実があったかという点にあります。

 したがって、4週4日の休日が確保されていれば、再度の振り替えもただちに違法となるわけではありません。

3 本件における回答
 本件上記ポイントにあてはめてみますと、家族の看護のために実家や病院に泊まりこむことは、社会慣習上、通常行われることであり、必要性もあると考えられます。さらに、ご質問からどの位の期間を看護に要するかが不明ですが、長期間継続して寝泊りしていたとの事実があれば、本件「実家」及び「病院」は住居と認められ、通勤途中に負傷を負った場合は、通災となるでしょう。

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