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死亡した社員の退職金受領について遺族間で争いがある場合誰に支払うべきか

弁護士 石居 茜(ロア・ユナイテッド法律事務所)

このほど、ある社員が不慮の事故で急死しました。退職金は遺族に支払うことになると思うのですが、その受け取りをめぐって、複数の遺族間で争いが起きています。このような場合、誰に支払うべきでしょうか。

従業員死亡の場合の退職金の受給権者について退職金規程で定めがあればそれに従って支払うべきですが、定めがない場合には、民法の定める法定相続分に従って各々に支払うべきでしょう。

1 死亡退職金の受給権の法的性格
 従業員が在職中に死亡した場合の退職金の受給権については、相続財産なのか、遺族固有の権利なのか、法的性格について大きく2つの見解に分かれます。

 すなわち、相続財産であれば、民法所定のとおり、基本的には相続人が法定相続分で分割取得することとなり、遺族固有の権利であれば、相続とはかかわりなく、特定の遺族が受給することとなり、他の相続人と分割する必要はありません。

2 判例
 福岡工業大学事件最高裁判決(最判昭60.1.31労経速1238-3)では、死亡退職金の受給権者の範囲及び順位について民法の相続人の範囲及び順位の規定とは著しく異なった規定をおいており、これによれば、規定は従業員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的としているとして、遺族固有の権利であることを認めています。

 その他判例の多くも、死亡退職金の支給基準、受給権者の範囲・順序等が法令、労働協約、就業規則等で明確に規定されている場合には、規定に定める遺族固有の権利であり、相続財産にはあたらないと判示しています(日本貿易振興会事件・最判昭55.11.27民集34-6-815等)。

 また、受給権者の範囲・順位について明確な定めがなく、「遺族又はこれに準ずる者に支給する」旨の規定があるにとどまった事案についても、本人と生計を共にしていたことを重視して、従業員の妻を受給権者と認め、相続財産はないとした事案もあります(理研健康組合従業員事件・東京高判昭40.1.27下民16-1-105)が、これは少し特殊な事案といえるかもしれません。

3 結論
 以上より、死亡退職金の受給権者の範囲・順位等について法令、労働協約、就業規則等で定められていれば、それに従って第1順位の者に全額支給すればよいですが、これらの定めがない場合には、死亡退職金受給権は、相続財産として、相続人が法定相続分で分割取得しますので、法定相続分に応じて支払うことで対応すべきでしょう。

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