法律Q&A

分類:

強制執行

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
(1)意義
 日本においては、債権者が債務者の不払いがあったときに、勝手に債務者の所有物を持ち出したりすることを認めていない為、債務者が弁済をしてくれないときには、一定の法的手続により債務者の財産の差押や競売の申立等をしなければなりません。当該手続を強制執行といいます。
(2)債務名義
 強制執行は、契約書さえ作っておけばできるというものではなく、債権があることを公的に証明した文書を用意する必要があり、この文書を裁判所に提出して、裁判所に所属する執行官と呼ばれる人によって行われますが、このような債権があることを公的に証明し、且つ強制執行を行うことができる書面を債務名義といい、どのような書面が債務名義になるかは、民事執行法22条に規定があります
(3)確定判決
 裁判が確定したときには、その確定判決が債務名義になります。ここでいう裁判の確定とは、敗訴した側が上級の裁判所に通常の手続で不服の申立(控訴や上告)ができなくなることをいいます。つまり、控訴や上告の期限(判決の送達を受けてから二週間以内)内に控訴、上告の申立がなかった場合や最高裁判所の判決が出されたとき(差戻判決を除く)に判決が確定します。
(4)仮執行の宣言のついた判決
 しかし、裁判の確定を待っていては権利救済が遅れてしまいますので、単純な金銭の支払い請求訴訟などでは、仮執行の宣言のついた判決(形式は、判決の主文の末尾に「この判決は仮に執行することができる」などと書いてあります)が出され、そのような場合は、判決の確定を待たなくても、その判決が債務名義になります。
(5)執行証書
 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものをいい、公正証書は、それ自体で要件が整ってさえいれば、わざわざ判決を得なくても強制執行をすることができます。

 実務的には公正証書で契約書を作成することを条件に金銭の貸借契約を行うことがよくありますが、これは貸主がいざというときに裁判にかけて回収する手間を省くために利用するものです。

 公正証書が債務名義になるには、金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求であることと、債務者が強制執行されても異議を述べない旨が公正証書に入っている必要がありますが、公証役場に行けば、公証人がこの文言の入った公正証書を作成してくれます。

(6)確定判決と同一の効力を有するもの
 確定判決ではなくても、法律によって確定判決と同一の効力を与えられ、債務名義になるものがあり、代表的なものは、裁判上で和解が成立したときに和解の内容を記載する和解調書や、民事調停が成立したときに調停内容を記載する調停調書です。
(7)強制執行の実施方法
 強制執行は、債務名義に執行文というものを付して、裁判所に差押や競売の申立をすることで手続が進行しますが、執行文は、債務名義が判決や和解調書の場合には、その判決や和解が成立した裁判所で、執行証書ならばその原本を保存する公証人から付与を受けます。

 しかし、強制執行の申立をしてもすぐに金銭的な満足が得られるわけではなく、特に不動産の競売の場合には、執行官の人手不足と、競売にかけてもそれを買い受ける人がいないために時間がかかり、手続が終了するまでに1~2年かかるといった状態がバブル崩壊後慢性的な状況になってきています。

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