法律Q&A

分類:

担保が取れなかった時の仮差押、仮処分

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
(1)財産確保のための保全処分
 今まで解説してきた債権保全措置としての担保取得などができないままに取引先が催足にも応じないような場合には、訴訟や法的な倒産手続への移行となります。しかし、破産手続などの場合は別として、訴訟での決着には、平均すれば1年前後の時間がかかります。その間に、取引先の財産が、隠されたり、一部の債権者だけに支払われたり、安値で売られたり、抵当権が新設・追加されたりしては、裁判で勝っても、債権回収ができない危険があります。そこで、訴訟での決着までの間、暫定的に、財産を差押えたり、不動産の処分を禁止するなどの措置を取るのが、仮差押や仮処分という民事保全法による保全処分です。
(2)仮差押
 先ず、仮差押は、金銭の支払いを目的とする売掛金等の債権について、前述のような取引先の資産隠しなどにより、訴訟で判決を貰った後に競売などをすることができなくなるおそれがある場合などに発せられます。仮差押は、取引先の不動産、動産の他に、取引先の持っている売掛金、賃金、銀行預金等の財産に対しても発せられます。ただし、給料債権などについては、取引先の最低限度の生活を保障するために、差押範囲に制限が及ぶ場合があります(民事執行法152 条)。
(3)仮処分
 債権回収に絡んだ仮処分としては、先ず、解説した担保権の履行の準備として、取引先が、納入した商品を代金未払いのままにバッタ売りする危険がある場合に先取特権や所有権留保の特約に基づきその商品を執行官の保管に移す仮処分や、取引先が唯一の財産を一部の債権者や親族に安値で売却したりタダで贈与したような場合で、その売買などを取消して、元に戻させる詐害行為取消訴訟を起こす場合に、不動産のそれ以上の譲渡を禁止する仮処分が利用されたりします。
(4)保全処分の手続
 仮差押も仮処分も、裁判前に、多くの場合、取引先に知られないように行うものです。この関係で、前に上げた例のような場合には、債権者の言い分のみで決定が出される場合がほとんどです。そのため、仮に、債権者の請求が間違っていた場合には、債権者の仮差押、仮処分の実行によって取引先が、売却を考えていた財産の処分ができなかったことなどに因る損害賠償の危険に備える必要があります。そこで、裁判所は、仮差押などの決定には、一定の担保(保証金)を積むことが条件にします。現在は多くの裁判所で、仮差押などの申立があれば、1乃至2日以内に、申立人と裁判官や書記官とが面接・協議し、証拠の足りない点の補充などをしたうえで決定を出してくれます。なお、担保金についてですが、例えば、不動産の仮差押ですと、その額は請求債権額または不動産の時価の2割から3割程度になる上に、全額が訴訟の決着(勝訴の確定や和解成立など)までは使えませんので、多額な場合、債権者の資金繰りへの影響をも考慮して保全手続進行の可否・是非を考えなければなりません。

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