- (1)支払猶予に応じる場合の方法
- 取引先が支払猶予を頼み込んで来ることがありますが、これに応じてやる場合には、以下の方法を採るとよいでしょう。
[1]書面の作成
まだ書面を作成していない場合はもちろん、契約当初に契約書等を作成した場合でも、新たに書面を作成するべきです。そこで、残額や支払方法などを記載した書面を取引先に書いてもらうか、配達証明付き内容証明郵便を送付してもらう、あるいは、双方が署名・捺印して作るとよいでしょう。配達証明付き内容証明郵便以外の場合には、公証役場で認証印をもらうとよいでしょう。双方が署名・捺印できる場合には、公正証書の形にすると効果的です。
[2]担保の確保
支払を猶予してやる条件として、まだ担保を付けていない場合はもちろん、契約当初から担保を付けていた場合であっても、追加の担保や保証人を付けるよう交渉してみてください。手形の振出・裏書を受けるのも1つの方法です。
- (2)請求の方法
- 取引先の方から何も言って来ない場合には、こちらの方から請求することになりますが、その場合には、債権の発生年月日・原因・金額等を記載した書面を配達証明付き内容証明郵便で送付するとよいでしょう。なお、期限の利益喪失後は残額全額について請求でき、また、違約罰が請求できる場合もあります(第1回の解説参照)。 ただ、取引先が請求に応じない場合は新たな方法を採ることになります(次回以降の解説参照)。
- (3)時効の中断方法
- 消滅時効は10年が原則です(民法167条)が、商取引の債権は原則5年とされ(商法522条)、その他にも例外的に短期の時効期間が定められている場合がある(民法169条~174条等)ため、時効を中断しておくことは重要です。時効中断の方法には、[1]請求、[2]差押え、仮差押えまたは仮処分、[3] 承認の3つがあります(民法147条)が、今回に関わるのは以下の2つです。
[1]請求
上述(2)の請求は裁判外の請求なので、さらにその後6か月以内に裁判上の請求などの手続を取ることが必要です(民法153条)。
[2]承認
取引先が支払猶予を頼み込んで来たときや、一部の支払いをして来たときも、時効が中断します(同法147条3号)。一部支払いの場合は、請求や支払猶予の場合と異なり、そのままでは書面が残らないので、証拠となるもの(領収書や通帳の振込記録等)を取っておいて下さい。
(税のしるべ 平成14年2月4日号掲載)