法律Q&A

分類:

身元保証・誓約書で契約(約束)することとは何か?(P1-6)

(1)身元保証の意味
 多くの企業で今でも採用の際に従業員に身元保証書や誓約書を提出させています。「身元保証人」の言葉からすると、何か「本人の出身・素性・経歴について間違いないことを確認する人」といったイメージがあります。現にそのように理解して安易に身元保証人となっている人も多いようです。会社の方でもその程度の効果しかないと思っている向きもあります。しかし、この内、身元保証に関しては次のような特別法による規制があり、一般的に用いられ、法的な意味での身元保証とは、「従業員の行為に因って会社が被った損害を賠償することを約束すること」とされています(身元保証法1条)。このような身元保証は、極めて責任の範囲が広いため、身元保証人の責任が重くなり過ぎる危険があるため、身元保証法によって、次のような制限が加えられています。
(2)責任の制限
 先ず、期間は定めがあれば5年までとされ、なければ3年とされ(2条)、いわゆる自動更新の規定は無効とされます。次に、企業は、従業員について業務上不適任と考えたり、配転で勤務内容を大きく変更した場合は身元保証人に対してそのことを通知しなければなりません(3条)。通知を受けた身元保証人は将来に向かって保証契約を解除することができます。しかしこの解除権を行使しない限りいかに勤務内容が変化し、例えば普通銀行員として入行した者が銀行支店長に就任したからと言っても、身元保証契約が失効することはありません(泉州銀行事件・最二小判昭44.2.21判時551-50)。
(3)諸事情の考慮
 最も重要なのは、保証責任が裁判所により制限されることがあることです(5条)。裁判で争われるのもほとんどこの規定による責任範囲です。条文では、裁判所が身元保証人の責任範囲を制限する際に考慮する事情として、[1]企業側の過失、[2]保証するに至った経緯、[3]その他一切の事情が掲げられています。例えば、使用者が前述の通知義務を怠っている間に、被用者が不正行為をして身元保証人の責任を惹起した場合に、右通知の遅滞は、裁判所が身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定める上で斟酌すべき事情として考慮されます(ユオ時計事件・最二小判昭51.11.26判時839-68)。
(4)企業の従業員に対する求償権の制限
 なお、民法715条3項による企業の従業員に対する求償権の行使の制限に対する判例の次のような判断基準も、従業員自体と身元保証人における責任の制限について参考となります。つまり、企業は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての企業の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し損害の賠償又は求償の請求をすることができるとされているからです(最一小判昭51.7.8民集30-7-689)。なお、横領の損害額の全額が不明な段階で社員の親族から損害賠償の責任を負うなどの念書を貰ったような場合についても、身元保証法第5条の責任制限の規定の適用があるとされています(最一小判判昭57.12.2民集36-12-2359)。
(5)誓約書の場合は
 なお、企業が採用の際に従業員に求める書類の名前が誓約書とされている場合があります。その内容は、内定をもらった学生の就職の誓約をはじめとして(内定につきP1-3参照)、各企業において異なり多伎に亘りますが、内容的に前述の身元保証と同様に従業員の企業に対する損害賠償の包括的保証をしている場合には、前述の身元保証法による責任の制限を受けることになります。なぜなら、同法による責任制限の規制の有無は、文書の表題によって決まるのでなくその内容によることになるからです(前述の念書に関する前掲・最一小判判昭57.12.2参照)。

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