法律Q&A

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会社分割の場合には転籍は拒否できるのか?(P3-8)

(1)会社分割による転籍
 企業の再編などの過程で行なわれる会社分割に関する商法・有限会社法等の改正(会社分割法)及びこれに関する「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」(承継法)が平成13年4月1日から施行され、会社分割は、企業にとって事業再編の大きな武器となっています。特に、承継法は、従来、原則として、労働者の同意を前提としていた転籍につき(P3-7参照)、分社手続のなかで、以下の通り、一定の労働者について同意を不要とするなど今までの労働法理を立法的に覆すなど実務的にも大きなインパクトを持っています。
(2)労働者の地位による転籍義務の相違
 しかし、承継法、同施行規則及び承継指針(平12.12.27労告127。指針)は、全ての労働者に転籍を当然に義務付けているわけではなく、次のような労働者の地位に応じて転籍義務の程度を区分して取扱っています。
先ず、承継法は、[1]分割会社が雇用する労働者で、設立会社等に承継される営業(承継営業)に主として従事するものとして労働省令で定めるもの(承継営業主要従事労働者」。図解の[1]、[4]に属する者)と(承継法2条1項1号)、[2]分割会社が雇用する労働者の内、[1]に掲げる労働者を除く、「承継営業を従たる職務とする労働者」等で、分割計画書等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を設立会社等が承継する旨の記載があるもの(指定承継労働者。図解の[3]に属する者)と(同法2条1項1号)の区別をし、更に、指針により、[3]「承継される営業に全く従事していない労働者」(承継営業非従事労働者。図解の[1]に属する者)を区分しています。
(3)承継営業主要従事労働者等の区分の効果
 この3種類の労働者の区別の差異は、承継営業主要従事労働者には、分割計画書等の記載のみにより、同意を要することなく転籍の効果を発生させ(承継法3 条)、同計画書等に記載ない場合には期限日までの異議申立による設立会社等への承継効果を認めるのに対して(同法4条)、指定承継労働者の場合には、逆に、期限日までの異議申立により設立会社等への転籍効果の発生を認めず、個別の同意がなければ分割会社への残留効果が認められ(同法5条)、承継営業非従事労働者においては、計画書等の記載や異議申立期限に関係なく、一般の転籍と同様、個別の同意がなければ転籍の義務はないという法的相違を導きます(指針)。

要するに、会社分割の場合、承継営業主要従事労働者の場合は当然に転籍を拒否できず、指定承継労働者の場合には所定の異議申立権の行使により転籍を拒否でき、承継営業非従事労働者では当然に転籍を拒否できる、ということになります。

(4)転籍拒否の実際上の問題
 しかし、実際には、転籍拒否ができるか否かは、もっと複雑に、以下の諸問題などとして現れてきます。

[1]労働者の区分
先ず、承継営業主要従事労働者か否かの差異が最大の問題となりますが、この点に関しては承継法施行規則及び指針が詳細な基準を示しています。

[2]協議義務や通知義務違反の場合
仮に、労働者区分等では転籍義務がある場合でも、企業の側に会社分割法が定める協議義務や承継法の定める通知義務の違反がある場合には、転籍義務はなくなり個別同意の有無によることになると解されます(指針も通知義務違反については同旨)。

[3]恣意的な配転や不当労働行為
その他、企業が、労働者の区分を回避しようと分割前に恣意的な配転をしたような場合や、労働組合の弱体化を狙っての転籍を行なった場合は、転籍義務が否定される場合があります(指針)。

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