法律Q&A

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労働時間はどうやって算出されるのか?(P4-2)

(1)労働時間の定義
 「労働時間」という用語は、日常用語としては、休憩時間を含めたもの(拘束時間)を指すこともありますが、労働基準法上は、休憩時間を除いた「実労働時間」を指します(菅野和夫「労働法」第5版補正2版257以下等参照)。そもそも「労基法上の労働時間」に当たるか否かについては、多数説・判例でも(三菱重工事件・最判平12.3.9労判778-11等)、当事者の合意(就業規則)等によって左右できず、客観的に決まるものであると解されています。そして「労働時間」が客観的にどのように定義されるかについては、上記判例は、行政解釈や通説的な立場に従って、労働時間とは、労働者が使用者の指揮監督・命令下に置かれている時間であるとする見解(指揮監督下説)を採用しました(前掲・三菱重工)。但し、上記基準に立っても、具体的な労働者の行為が、「指揮監督下にある」か否かは微妙です。例えば、上記判例は、更衣等の作業準備行為に関して、そうした行為を事業所内において行うことを使用者から義務づけられ、またはこれを行うことを余儀なくされた場合には、当該行為は原則として使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるとしていますので、問題の行為に関する使用者の義務付け(またはそれと同視される状況)が重視されているように解されます。その他に、問題となる行動にどの程度「業務性」があるかも考慮されます。しかし、使用者が知らないままに労働者が勝手に業務に従事した時間まで労働時間に算入はされず、いわゆる自発的残業や持帰り残業でも、使用者の黙示の指示があった場合に限り労働時間となると解されます(三栄珈琲事件・大阪地判平3.2.26労判586-80等)。そのような意味で、結局、労働時間とは、「使用者の作業上の指揮監督下にある時間または使用者の明示または黙示の指示によりその業務に従事する時間」と定義されるものと解されます(菅野・前掲258)。
(2)具体的な労働時間算出
 他の判例においては、例えば、店員が顧客を待っている間のいわゆる手待時間は、その間特に実作業を行っていなくとも、一般に労働時間に当たると解され(すし処「杉」事件・大阪地判昭56.3.24 労経速1091-3)、ビル管理会社の従業員が管理・警備業務の途中に与えられる夜間の仮眠時間も、仮眠場所が制約されることや、仮眠中も突発事態への対応を義務づけられていること等を理由に、労働時間に当たるとする判例が多くみられます(大星ビル管理事件・最判平14.2.28 労判822-5など。但し、JR貨物事件・東京地判平11.6.労判653-12では、交替で警備を行っていた警備員について、仮眠時間中は職務上の義務を課していなかったとして労働時間性を否定しました)。なお、こうした業務は、労基法41条3号の定める監視断続労働の許可を得れば、労働時間規制の適用が除外される場合があります(平5.2.24基発110)。次に、実作業に入る前や作業終了後の更衣時間については、最高裁は、前述の事情を踏まえ、更衣時間は労働時間に当たるとしましたが(前掲・三菱重工事件)、最高裁は、そうした更衣に要する時間も「社会通念上必要と認められるものである限り」労働時間に当たるとして、一定の限定を付しており、一般の事務職の制服の更衣時間に関してこの判決と同様の判断が下されるとは思わない方が無難でしょう。更に、研修や小集団活動(QCサークルなど)、あるいは運動会などが、所定労働時間外に行われる場合、指揮監督下説では、これらの活動が強制されたものかどうかが判断基準となりますが、業務性がどの程度あるかも考慮されるべきと解されます。
(3)労働時間の管理責任
 なお、労働時間の自主申告などによるいわゆるサービス残業等の抑制のため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平13.4.6基発339)が、始業、終業時刻、労働時間の把握等に関して、事業主が講ずべき措置を具体的に示しています。

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