- (1)ワークシェアリングの意味
- ワークシェアリングに関しては、マスコミを始めとして様々な解説が示されていますが、最大公約数的な報告では(平13.4.26厚生労働省発表「ワークシェアリングに関する調査研究報告書」<報告>)、ワークシェアリングとは、雇用機会、労働時間、賃金という3つの要素の組み合わせを変化させることを通じて、一定の雇用量を、より多くの労働者の間で分かち合うことを意味します。
- (2)ワークシェアリングの類型と内外での利用状況
- ワークシェアリングは、いずれもより多くの労働者の雇用機会増大のためですが、直接的な目的からみて、以下の4タイプに類型化され(図表参照)、その利用概況は以下の通りとなっています。
[1]雇用維持型(緊急避難型):一時的な景況の悪化を乗り越えるため、緊急避難措置として、従業員1人あたりの所定内労働時間を短縮するもので、海外では、所定内労働時間短縮に伴う賃金低下をできるだけ緩和するよう企業による諸手当の支給等が実施され、国内での所定内労働時間短縮相当の賃金削減を実施した例では、従業員の抵抗感を和らげるため、対象者限定などの措置がとられています。
[2]雇用維持型(中高年対策型):中高年層の雇用を確保するため、中高年層の従業員を対象に、当該従業員1人あたりの所定内労働時間を短縮するもので、国内の事例では、主に、定年延長や再雇用等による60歳以降の雇用延長対策としての取組が見られます。
[3]雇用創出型:失業者に新たな就業機会を提供することを目的とし、国又は企業単位で労働時間を短縮するもので、海外では、欧州諸国において国家単位での取組がなされていますが、企業負担や労働者の賃金低下を緩和するため、政府による助成が実施されています。
[4]多様就業対応型:正社員について、短時間勤務を導入するなど勤務の仕方を多様化し、女性や高齢者をはじめとして、より多くの労働者に雇用機会を与えようとするもので、オランダでは、政労使の合意によりパートタイム労働者の均等待遇の実現により、積極的にパートタイムへのシフトを推進しました。又、海外の取組として、ジョブシェアリングという方法(フルタイム労働者1人分の職務を特定の2人で労働時間を分担しつつ行い、職務の成果について共同で責任を負うとともに評価・処遇についても2人セットで受ける制度)もみられます。
- (3)我国での政労使合意の成立
- 我国でも、平成14年3月29日「ワークシェアリングに関する政労使合意」が、厚生労働省、日本経営者団体連盟と日本労働組合総連合会の間で成立しました(同日付厚生労働省発表)。ここでは、前述(2)のワークシェアリングの類型の内、[1]の「緊急対応型」と、[4]の「多様就業型」に限定して、以下のようなワークシェアリングの取り組みに関する5原則を示しています。
[1]ワークシェアリングとは、雇用の維持・創出を目的として労働時間の短縮を行うもので、我が国の現状では、多様就業型の環境整備に早期に取り組むことが適当で、また、現下の厳しい雇用情勢に対応した当面の措置として緊急対応型に緊急に取り組むことも選択肢の一つ/[2]ワークシェアリングについては、個々の企業において実施する場合は、労使の自主的な判断と合意により行われるべきもので、労使は、生産性の維持・向上に努めつつ、具体的な実施方法等について十分協議を尽くすことが必要/[3]政労使は、多様就業型の推進が働き方やライフスタイルの見直しにつながる重要な契機となるとの認識の下、そのための環境づくりに積極的に取組む/[4]多様就業型の推進に際し、労使は、働き方に見合った公正な処遇、賃金・人事制度の検討・見直し等多様な働き方の環境整備に努力/[5]緊急対応型の実施に際しては、経営者は、雇用の維持に努め、労働者は、所定労働時間の短縮とそれに伴う収入の取り扱いについて柔軟に対応するよう努力、が掲げられています。目的から見た分類 背景 誰と誰のシェアリングか 仕事の分ち合い手法 賃金の変化 1)雇用維持型(緊急避難型):一時的な景況の悪化を乗り越えるため、緊急避難措置として、従業員1人あたりの労働時間を短縮し、社内でより多くの雇用を維持する。 ・企業業績の低迷 ・現在雇用されている従業員間全体 ・所定内労働時間短縮
・休暇の増加・減少
・維持(生産性上昇等によりカバー)2)雇用維持型(中高年対策型):中高年層の雇用を維持するために、中高年層の従業員を対象に、当該従業員1人あたりの労働時間を短縮し、社内でより多くの雇用を維持する。 ・中高年を中心とした余剰人員の発生。
・60歳代前半の雇用延長・高齢者など特定の階層内
・60歳未満の世代から60歳以上の世代3)雇用創出型:失業者に新たな雇用機会を提供することを目指して、国または企業単位で労働時間を短縮し、より多くの労働者に雇用機会を与える。 ・高失業率の慢性化 ・労働者と失業者 ・法定労働時間短縮 ・政府の援助により維持される場合が多い(フランス) ・労働者(高齢者)と失業者(若年層) ・高齢者の時短、若年層の採用 ・減少 4)多様就業対応型:正社員について、勤務の仕方を多様化し、女性や高齢者をはじめとして、より多くの労働者に雇用機会を与える。 ・女性・高齢者の働きやすい環境作り
・育児・介護と仕事の両立
・余暇ー所得選好の多様化
・労働者の自己実現意識
・企業にとって有能人材確保・現在の労働者と潜在的な労働者 ・勤務時間や日数の弾力化
・ジョブシェアリング:1人分の仕事を2人で分担
・フルタイムのパートタイム化・働き方に応じた賃金