法律Q&A

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賃金はどのように支払われるのか?(P5-2)

(1)賃金支払に関する労基法上の諸原則
 労基法は、賃金の支払方法に関して、使用者は、通貨で、労働者に直接、その全額を支払わなければならず(同24条1項)、また、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない(同条2項)と定めています。これを、一般には、[1]通貨[2]直接[3]全額[4]定期払の4原則と言われています。
(2)通貨払の原則
 通貨払の原則については、法令や労働協約に定めのある場合や、命令で定める賃金について、確実な方法で命令に定めるものによる場合には、例外が認められています(同24条1項但書)。命令に基づく例外としては、労働者の同意を得ることを前提とした、退職金の銀行等の自己宛小切手による支払と、指定された銀行口座および一定の証券総合口座への振込による支払があります(銀行振込については、行政解釈により、支払日午前10時頃には払い出しが可能であることや、過半数組合ないし過半数代表者と労使協定を締結することなどの要件も課されています。平10.9.10基発529)。
(3)直接払の原則
 直接払の原則については、賃金債権の譲渡に伴う第三者や賃金受領の代理人への支払等が問題になります。この点につき最高裁は、賃金債権を譲渡すること自体は労基法24条に違反しないが、使用者は譲受人に賃金を支払うことはできず、あくまで労働者本人に支払う必要があるとしています(電電公社小倉電話局事件・最判昭43.3.12民集22-3-562)。また、代理人に対する賃金の支払も違法となりますが、労働者本人と同一視できる使者(例えば、本人が病床に臥している場合の配偶者が使者として受領するなど)に対する支払は可能であると解されています(昭63.3.14基発150)。
(4)全額払原則
 全額払の原則に関しては、様々な問題があります。先ず、使用者は、賃金債権について、労働者に対して有する反対債権によって相殺することが、この原則に違反するかという問題につき、最高裁は、賃金を確実に労働者に受領させるという本原則の趣旨を重視して、使用者による一方的な相殺も許されないとしています(日本勧業経済会事件・最判昭36.5.31民集15-5-1482等)。但し、最高裁は、労働者の同意に基づくと認めうる合理的な理由が客観的に存在すれば、合意相殺は適法であると判断しています(日新製鋼事件・最判平2.11.26民集44-8-1085)。なお、最高裁は、前から、賃金債権の放棄が、労働者の自由意思によりなされたものと認められる限り有効であるとしていました(シンガー・ソーイング・メシーン事件・最判昭48.1.19民集27 -1-27)。但し、労働者の過半数代表者との労使協定により賃金からの社内貸付金等返済のための控除が定められていれば、その返済金が相殺されることはあります(同条1項但書)。
(5)毎月1回以上定期日払の原則
 この原則では、例えば、当月1日から末日締めの賃金計算をしている企業では、翌月末日払いの定めも有効とされますが、翌々月末なででは、「毎月1回以上」に抵触することになるでしょう。なお、この原則は、当然、賞与等には適用されません(同条2項但書)。
(6)非常時払
 なお、使用者は、労働者が、以下のような非常の場合の費用に充てるために請求する場合は、支払期日前であつても、既に働いた労働に対する賃金を支払わなければならない(同25条)、として、労働者の緊急時への手当がなされています。非常時として定められているのは(労基則9条)、[1]労働者の収入によつて生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合[2]労働者又はその収入によつて生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合[3] 労働者又はその収入によつて生計を維持する者がやむを得ない事由により1週間以上にわたつて帰郷する場合とされています。但し、これは飽くまで既に労働した分への請求権ですから、いわゆる賃金の前借を認めたものではありません。

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