法律Q&A

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サラ金会社などから給料に対し、差し押さえがあったら?(P5-9)

(1)仮差押
 一般に従業員の給与に関して出会う差押には2種類あります。先ず、仮差押です。これは、未だクレジット会社などの債権者が従業員に対して差押の前提となる判決や公証役場での公正証書(執行証書)などの書類(債務名義)を持っていない場合に、これらの債務名義を取るまでの間、給料が従業員に支払われてしまって無くなるのを防ぐためになされるものです。この場合は仮差押えられた額を次に説明する本差押までの間、企業は、従業員に対して支払ってはならないことになります。
(2)差押
 次に差押です(本差押)。これは、(1)で説明した判決などの債務名義に基き、給料、賞与、退職金等を差押えて会社に対して差押えた部分の支払いを禁止するだけでなく、更に、差押をした債権者に直接会社に対して差押えた賃金を取り立てる権限を与えるものです。この場合、企業は、差押命令に対して、原則として従業員の手取り給与の4分の1の支払いを止め(民事執行法152条、東京高決昭34.6.22判時199-25)、裁判所から差押命令と一緒に送られて来る陳述命令の催告書に回答し、特に差押えられた給与の支払いを拒否する理由がない場合には支払うという回答を書き、取立てて来るクレジット会社などの差押債権者に給与を支払うこととなります。この場合は差押債権者からの請求に企業が直ちに支払わなかったからと言って、いきなり企業の財産を差押える等の措置をとられることはありません。又、企業が従業員に対して、差押前から反対債権を持っている場合、例えば賃金の控除協定(労基法24条1項)などにより企業は合法的に控除できる貸付金債権などがある場合は、これについて相殺を主張することができます。
(3)陳述命令の回答書に記入に関する注意
 なお、以上のように差押えられた賃金を差押債権者に対して支払うかどうか、支払わない場合はその拒否する範囲と理由などについて回答を求められる陳述命令の回答書への記入には充分注意しなければなりません。この回答書への記入を間違えたからと言って後の取立の訴えで主張を絶対に変更できない訳ではないのですが、無益なトラブルに巻き込まれないように、期限内に、正確に、賃金控除協定により優先的に企業が相殺できる債権等がある場合には、これらを明記した上で清算処理することを回答して貰うことが必要です。
(4)差押範囲の圧縮や取消の申立
 なお、最近、クラサラ等の差押に対して、民事執行法153条1項による差押命令の取消や差押禁止範囲の拡大(差押範囲の圧縮)も申立が利用されています。即ち、同条1項は「『債務者及び債権者の生活の状況その他の事情』がある場合、差押禁止債権の範囲を変更することができ、ときには債権差押命令を取消しうると定めているが、民事執行法の差押禁止制度が債務者の生活保障、生計維持のための保護規定であることから考えると、同法同条同項が差押禁止の範囲を拡張することができる『債務者の生活の状況』は、現在の一般的な生活水準に比して債務者が差押えによって著しい支障を生じない程度の生活水準を確保しえない蓋然性が具体的に存する状況であり、緊急継続的に医療費など家族の生活の維持に多額な出費を要する場合、給与債権差押えの場合でいえば、手取り給与額が一般的な水準に比して低額である場合などの事情がこれに当たり、...将来免責決定確定により債務者が支払いを免れる見込みがあるという事情」も考慮されるとして、債務者に対して同時破産廃止の決定があり今後免責が見込まれることも一事情として考慮して、差押禁止債権の範囲の変更により給料債権の差押命令が取り消される例が少なくなく(奈良地葛城支決平7.2.16判時1557-116等、その他、差押範囲を圧縮した例として札幌高決昭60.1.21判タ 554-209等参照)、同様の事情がある場合には、この申立を弁護士に依頼して行なうべきでしょう。

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