法律Q&A

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従業員の健康情報に関するプライバシー保護をめぐる問題とは?(P6-10)

(1)労安法は健康診断に関する守秘義務を定めています
 健康診断(健診)に関する秘密の保持については、労安法も、健診の実施の事務に従事した者(健診の結果を職制上当然に知り得る立場にある者を含む)は、その実施に関して知り得た労働者の心身の欠陥その他の秘密を漏らしてはならないとしています(同104条、懲役又は罰金の罰則あり)。他方、労安法は、この守秘義務を前提に、法定健診事項に関しては、企業にその健診結果報告を原則として5年間保存することを求め(同66条6項、労安則57条)、その結果に従った業務の軽減措置等をもとめていて(同66条7項)、その限りで、従業員の健康情報に関するプライバシ―の保護は制約されています。
(2)健康配慮措置のためには一定の情報の開示が必要
 つまり、業務上の必要性と従業員の健康情報に関するプライバシ―の保護への配慮は調整の問題であり、雇主等が、これらの情報を、まったく開示できないという訳ではありません。情報の入手方法、開示した相手方の範囲、秘密自体の内容・程度、開示の業務上の必要性等を総合して、「みだりに」開示したか否かが問題とされるのです。
(3)行政の個人情報保護に関する指針・解説
 これについては、厚生労働省から、平成12年12月20日「労働者の個人情報保護に関する行動指針」(指針)とその解説(解説)が労働者の健康情報の管理に関し様々な基準を示しています。例えば、指針は、「使用者は、法令に定めがある場合及び就業規則等において、使用者を含め医療上の個人情報の処理に従事する者について」、「(イ)特別な職業上の必要性/(ロ)労働安全衛生及び母性保護に関する措置/(ハ)(イ)及び(ロ)に掲げるほか労働者の利益になることが明らかであって、医療上の個人情報を収集することに相当の理由があると認められるもの」の「目的の達成に必要な範囲内で収集する場合を除き、医療上の個人情報を収集してはならない」としています。更に、解説は、上記の場合の具体例につき、例えば「(イ)の『特別な職業上の必要性』については、社会通念等により客観的に判断して必要性及び合理性がある場合で、例えば、医師、看護婦等について結核等の感染症に感染していないことを確認する場合、パイロットやバス、トラック等輸送機関の運転手について視力が一定水準以上であること等を確認する場合などが考えられる。」などとしています。
 更に、指針は、「医療上の個人情報は、原則として就業規則等において」所定の管理者が「他の個人情報とは別途に保管するも」ことを求め、解説も、「医療上の個人情報は、個人情報の中でも特に機微に触れる情報であり、その保護が図られなければならないものであることにかんがみ...その閲覧等を制限するため、できる限り別途保管することが望ましい」と指摘しています。
(4)指針等への違反の場合の対応措置
 今後は、企業には、指針・解説に沿った健康情報の管理が求められ、これに違反する場合には、従業員は企業に対して、その是正や、損害賠償の請求等を求めることができる場合があります。
 既に、指針等の出る前の判例も(HIV感染者解雇事件・東京地判平成7.3.30労判667-14)、雇主や、派遣先企業(雇主等)に対して、労働者のプライバシ―の保護義務を認めた上で、「個人の病状に関する情報は、プライバシ―に属する事柄で」、とくにHIV感染に関する情報は、感染者に対する社会的偏見と差別があることから、極めて秘密性の高い情報に属するものとして、派遣先企業の社長から派遣元企業に対する派遣労働者の感染事実の連絡がこの違法な漏洩に当るとして、派遣先企業の社長と派遣先企業自身に対して300万円の慰藉料の支払を命じています。

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