法律Q&A

分類:

社内健康診断でガンを発見できなかったことを会社に賠償請求できるのか?(P6-11)

(1)判例
 企業の行なう健康診断(健診)で、健診で発見できなかった病気について雇主企業に対してどこまで責任を問えるのか。この問題につき争われた東京海上事件(東京地判平7.11.30労判687-27、同控訴事件・東京高判平成10.2.26労判732・14。判決)は、結論としては、企業責任を認めませんでした。
(2)社内健診の精度
 判決では、従業員の肺癌による死亡につき、社内健診におけるレントゲン写真の異常陰影の見過しなどのため、肺癌の発見と処置が遅れたものとして、健診に関与した医師、診療所と企業の安全配慮義務違反の責任が問われましたが、判決は、まず、健診における注意義務の精度を「定期健康診断は、一定の病気の発見を目的とする検診や何らかの疾病があると推認される患者について具体的な疾病を発見するために行われる精密検査とは異なり、企業等に所属する多数の者を対象にして異状の有無を確認するため」のもので「撮影された大量のレントゲン写真を短時間に読影するものであることを考慮すれば...異常の有無を識別するために医師に課せられる注意義務の程度にはおのずと限界がある」と医師らの責任を否定しました。
(3)社内健診での企業責任の判断基準
 次に判決は、企業の責任につき、健診の実施が安全配慮義務の履行の一環であるとしても、「信義則上、一般医療水準に照らし相当と認められる程度の健康診断を実施し、あるいはこれを行い得る医療機関に委嘱すれば足り」「右診断が明白に右水準を下回り、かつ、企業側がそれを知り又は知り得たというような事情がない限り、安全配慮義務の違反は認められない」として企業の責任を否定しました。
 判決によれば、実際上、企業が、然るべき医療機関に健診を委嘱している場合には、少なくとも、健診における異常発見上の見落としによる安全配慮義務違反の責任を企業に求めることはかなり困難となるでしょう。

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