法律Q&A

分類:

アルバイトなどの兼業を理由とした解雇は認められるのか?(P7-9)

(1)兼業禁止の有効性
 多くの会社の就業規則で、兼業・兼職を禁止し、その違反が懲戒事由として定められています。しかし、勤務時間外は、労働者は、本来、使用者の支配を離れ、自由である筈であるとしてその効力を争うことはできないでしょうか。ところが、裁判所の大勢は、就業規則で兼業・兼職を禁止することの合理性を一応認めています。例えば、兼業禁止規定は、労働者が就業時間外に適度な休養をとることが誠実な労務提供のための基礎的条件であり、兼業の内容によっては会社の経営秩序等を害することもあり得るとし(小川建設事件・東京地判昭57.11.19 労民33-6-1028)、特に、競合関係のある兼職については合理性が認められ易いようです(橋元運輸事件・名古屋地判昭47.4.28判時680-88等)。
(2)兼職禁止の範囲
 しかし、裁判所の大勢は、勤務時間外の時間については、本来、使用者の支配が及ばないことを考慮して、兼職禁止範囲を限定的に解釈しています。例えば、会社の職場秩序に影響せず、かつ会社に対する労務の提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の兼職は違反とは言えないとしています(前掲・橋元運輸事件)。
(3)その他の判断
 そのような観点から、裁判所では、[1]従業員が、会社代表者の実弟の設立した競争会社の取締役に就任したことを理由としてなされた懲戒解雇につき、例え、解雇当時、右従業員が競争会社の経営に直接関与していなかったとしても、将来、直接関与する事態が発生する可能性は大きく、経営上の秘密が競争会社に漏れる可能性もあるから、右二重就職は、企業秩序を乱すもので、懲戒事由である「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇い入れられ、就職した者」に当たるとして、懲戒解雇が有効とされ(前掲・橋元運輸事件)、[2]木工、家具の制作等を業とする会社の家具組立工が、同業の会社に就労したことを理由とする懲戒解雇につき、右就労は、会社が従業員の長時間労働による肉体的疲労度を軽減することなどを目的として特別加算金を支給して残業廃止する特別措置を実施中に、再三にわたる会社側の警告を無視してされたものであるから、就業の規律を乱したものとして、懲戒解雇事由である「他へ就業しないとの規定に違反したとき」に当たるとされ(昭和室内装置事件・福岡地判昭47.10.20 判タ291-355)、[3]建設会社の事務員が、会社に無断で、就業時間終了後である午後6時から午前0時までキャバレーの会計係として二重就職したことは、右懲戒事由に当たるとした上、右のような懲戒事由を定めた規定が置かれている以上、労働者が、使用者に対して兼業の具体的職務内容を告知してその承諾を求めることなく無断で二重就職したこと自体が、企業秩序を阻害する行為と評価されること、更には、本件の兼業は、毎日6時間にわたり、かつ、深夜に及ぶもので、単なる余暇利用のアルバイトの域を超え、労務の誠実な提供に支障を来す蓋然性が高いこと等を総合すると、解雇は、企業秩序維持のために止むを得ないもので、権利濫用に当たらないとされています(前掲・小川建設事件)。
 但し、[4]東京貨物社事件(浦和地決平9.1.27 労経速1680-3)は、労働者が会社と競業関係にある新会社を設立して業務を開始したことにつき、競業禁止特約等に基づき差止の仮処分命令を求めた事案で、判旨は、職業選択の自由が保障され、公正で自由な競争を促進すべきものとされるわが国では、「基本的には、競業禁止は、たとえ合意によるものとしても、無制約に許されてはならないものというべきであり、それが許されるのは、それを必要とする合理的理由があるとき、その必要を満たすに必要な範囲でのみ競業を禁止する合意が、正当な手続きを経て得られ、かつ、禁止に見合う正当な対価の存在を認められる場合に限られる」として、当該と特約を無効としています。

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