法律Q&A

分類:

退職後に前職の営業秘密を漏らすとどうなるのか?(P7-10)

(1)不正競争防止法の適用
 営業秘密として保護される情報を不正に持ち出し、それを利用した者と、その情報が不正に持ち出された事情を知りながらそれを手に入れて利用した第三者に対しては、当該労働者の退職後であっても、不正競争防止法(防止法)1条3項によって、損害賠償請求、情報使用の差し止め、不正使用された情報が入った媒体物等の廃棄や謝罪広告等の信用回復措置を求めることができます。
(2)保護の条件
 先ず、営業秘密として保護されるための条件は、その情報が、[1]秘密として管理され、[2]技術上又は営業上の有用な情報であり、[3]公然と知られていないものであること、の三つです(高発泡ポリエチレンの製造方法に関する技術が、これを所持する会社の開発にかかり、営業に不可欠の有用な技術である上、相応の秘密管理をされてきたものして、営業秘密ないし秘密ノウハウに当たるとされた例として、三和化工事件・大阪高判平6.12.26判時1553- 133)。
[1]「秘密として管理されていること」とは
 営業秘密であると客観的に認識できるような状態、一般的には就業規則等で、営業秘密に関する文書管理、営業秘密の収納・保管・破棄方法などに関する規定を置いたり、それらに関する各規定を作成したり、営業秘密の取扱者を限定するなどの方法により管理されていることが必要です(秘密として管理されていたと言えないとされたコンベアベルト事件・大阪高決平5.4.15判決速報219-10-6262参照)。

[2]「技術上、営業上の有用な情報であること」とは
 生産・販売・研究開発等の事業活動に役立つ情報であることです。なお、役員個人のスキャンダル情報などは会社としては秘密であっても、営業秘密とはみなされませんが、就業規則等で定められる守秘義務の対象にはなり得ますし(役員人事についての内部情報が一般的な守秘義務の対象とされた例として千代田生命保険事件・東京地判平11.2.15労判755-15参照)、役員個人のプライバシー侵害問題となる場合があります。

[3]「公然と知られていないこと」とは
 少くとも不特定多数の者に知られる状態になっていないことです(防止法施行前の裁判例ですが、営業秘密の非公知性が認められた例として、アイ・シー・エス事件・東京地判昭62.3.10判タ650-203等参照)。

(3)不正利用とは
 以上のような営業秘密を退職者が「不正に」持ち出して利用するということは、会社の中から盗み出したり、盗聴したりしたものばかりでなく、退職者が、退職後に会社との間の信頼関係を裏切って、無断で営業秘密を利用して会社のライバルとなる会社を設立したり、営業秘密を他の企業に売り飛ばしたりする場合などの不正の利益を図る目的や会社への加害の目的のため、その営業秘密を自分で使用したりすることも含まれます。但し、その証明は実際には困難な場合が多いものです(これらが認められなかった事件としてタビックスジャパン事件・東京地判平6.12.12労判673-79等参照)。なお、就業規則などで退職後の守秘義務を規定していなくても、労働契約上の信義則からこの行為者の「不正」さが認められることになります。そしてライバル会社が退職者により右のように不正に持ち出された営業秘密を、そのような事情を知っていながら、又は簡単に知ることができたにも拘らず取得する行為や、その後、自分で使用したりする行為も差し止めなどを受けることになります(不正目的使用開示行為とされた例として三和化工事件・大阪高判平6.12.26前掲、違反なしとされた例として、西武商事事件・福岡地判平6.4.19労旬1360-48、バイクハイ事件・仙台地判平7.12.22判時1589-103等照)。
(4)一般的な職務経験の場合は
 なお、従業員が職務の中で一般的に知ることができて習得した知識、技術、ノウハウ等は営業秘密には当たらない、とされています。

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