- (1)労基法上の妊産婦への業務軽減措置義務
- 労基法は、母性保護の観点から、妊産婦の請求に係る前述(P9-4参照)の時間外・深夜・休日勤務の禁止の他に、「他の軽易な業務」への転換義務を定めています(労基法65条3項)。ここで、軽易業務の種類などについて特に規定はなく、原則として、女性が請求した業務に転換させれる趣旨と解され(昭61.3.20基発151。但し、業務の新設までは必要ではありません)、軽易化には業務内容の変更だけでなく、労働時間帯の変更(早場の遅番への変更等)も含み、これにより、一定の通勤緩和の効果も狙えることになります。
- (2)改正均等法による母性健康管理の義務化
- 改正均等法22条、23条は、妊娠中及び出産後の健康管理(妊産婦の健診と軽減措置)を義務化しました。但し、医師等が特に必要と認める場合、その指示された回数による以上の指導を受けるための時間を与えることが義務化され、労働者にとっては権利化しました(均等則18条)。この義務・権利は産後もあります。しかし、軽減措置後についての従前の賃金の保障は法律上なされていません。
- (3)妊娠中の女性労働者に対する医師の指導事項を守るために必要な措置
- 女性労働者が医師等から何らかの指導を受けた場合、その指導事項を守ることができるようにするための勤務の軽減、勤務時間の短縮、休業等の適切な措置を講じることが、事業主に義務づけられました。具体的な内容については、「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」において定められています。この指針では、事業主が、女性労働者の症状等に関する情報につき、プライバシーの保護に、特に留意する必要があることが強調され、所定の書式として「母性健康管理指導事項連絡カード」の利用に努めることとされています。