法律Q&A

分類:

労働協約とはどのようなものか?(P11-2)

(1)労働協約とは
 「労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する協定であって、書面に作成され、両当事者が署名または記名押印したもの」(労組法14)です。
(2)成立要件(労組法14条)
[1]当事者は
 「労働組合と使用者又はその団体」です。「労働組合」には、上部団体も団体交渉の当事者となった場合は労働協約を締結できます。

[2]内容には
 労働条件その他として、個別的労働関係に関する諸規定の他、労働組合と使用者間の団体的労使関係に関する諸ルール(組合員の範囲、組合への便宜供与や組合活動のルール、団交手続や労使協議制・苦情処理手続、争議行為の制限や手続等)が含まれます。

[3]要式
 書面に作成され、署名又は記名押印が必要です。書面の表題・名称や形式は問わないので「確認書」「覚書」でもよく、表題がなくてもかまいません。

(3)規範的効力
 労働協約中の「労働条件その他の労働者の待遇に関する基準」(規範的部分)に違反する労働契約の部分は無効となり、無効となった部分は労働協約上の基準の定めるところによることになります(労組法16条)。労働契約に定めがない部分についても同様です。つまり「労働条件その他の労働者の待遇に関する基準」は個々の労働契約を直接規律する効力を与えられており、これを規範的効力と言っています。
(4)債務的効力
[1]債務的部分
 労働協約は全体として契約としての特別の効力、すなわち債務的効力が認められます。債務的効力が認められるのは協約全体ですが、(3)の規範的部分には属さない部分を特に「債務的部分」と呼びます。使用者と労働組合間で団体的労使関係の運営についてのルールを設定したものが主で、組合員の範囲、ユニオン・ショップ、組合への便宜供与や組合活動のルール、団交手続や労使協議制・苦情処理手続、争議行為の制限や手続、ルール等がこれに当たります。

[2]履行義務
 協約当事者は、労働協約の規定全般について契約当事者としてそれを遵守し履行する義務を負います。一方当事者(労働組合(個々の組合員ではない)ないし使用者)は、他方当事者が協約規定に違反したり、それを実行しなければ、その履行を請求し、又は不履行によって生じた損害の賠償を求めることができるのが原則であり、特に債務的部分についてはこれが妥当します。

[3]平和義務
 平和義務とは、協約当事者が労働協約の有効期間中に当該労働協約で既定(解決済)の事項の改廃を目的とした争議行為を行わない義務を言います。協約に明示されていなくても当然に生じる義務と解されています。ただ、平和義務は当該協約に既定された事項にのみ生じるものであり(「相対的平和義務」)、次期協約の交渉期間に入れば、次期協約の内容を巡って争議行為を行うことは同義務に違反するものではありません(弘南バス事件・仙台高秋田支判昭和 39.4.14労民15-2-268)。
 協約当事者が平和義務に違反した場合は、相手方当事者は違反した当事者に対して損害賠償を請求できます。この責任の主体は協約当事者たる団体(労働組合)のみであって、その構成員たる争議行為実行者ではありません。また、違反した当事者に対する違反行為の差止請求については、これを否定する判例があります(日本信託銀行事件・東京地決昭和35.6.15労民11-3-674)。さらに平和義務に違反する争議行為が労働組合によって行われた場合にその参加者に対して使用者が懲戒処分をなしうるかについては、弘南バス事件・最三小判昭和43.12.24民集22-13-3194)は平和義務に違反する争議行為は単なる契約上の債務不履行であって企業秩序の侵犯に当たるとすることはできないとして否定しています。

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