- (1)企業内組合としての企業施設の利用
- 多くの日本の労働組合は、いわゆる企業内組合として企業内に事務所を企業から貸与されたり、企業の会議室施設等の使用をしたりしています。労組法でもこの程度の援助は違法な経費援助に当たらないとされています(同2条2号但書、7条3号但書参照)。
- (2)社内集会等を当然には請求できない
- しかし、これらは、法律的には、労組法等から当然に派生する権利と言う訳ではなく、労使間の各施設等の利用に関する労働協約や労使慣行等が成立していない限りは、労働組合に企業施設の利用権はありません。つまり、元来企業には組合活動のために便宜を提供すべき義務がある訳ではなく、組合活動のために企業が便宜を提供しないことによって労働者の団結権が侵害されるということにもなりません。裁判所も、労働組合による企業施設の利用は、本来使用者との団交による合意に基づいて行われるべきで、利用の必要性から組合が利用権限を持ったり、使用者がその利用についての受忍義務を負うようなことはなく、組合が使用者の許可を受けないで勝手に企業施設内で組合活動を行うことは、その利用を許さないことが使用者の施設管理権の濫用と認められる特別の事情のない限り正当性はないとしています(国鉄札幌運転区事件・最判昭54.10.30民集33-6-647)。濫用を認められる例としては、複数組合が並存する場合に、一方の組合に企業施設を組合事務所として貸与したが他方の組合には貸さないというような差別をした場合が考えられます(日産自動車事件・最判昭62.5.8 判時1247-131、東洋シート事件・最判平9.4.24労判737-23参照)。
従って、労働組合が、休憩時間などであっても、前述のような労働協約等なしに、企業ににその使用許可を求めることもせず、一方的に、無断で会社施設を使用したりすることは違法となりますので注意が必要です。