メルマガ「人事労務の勘所」

2018.06.08

第56回 定年後再雇用において定年前と全く異なる職種に従事させてよいか。

いつもお世話になっております。
ロア・ユナイテッド法律事務所でございます。

今月も人事労務の勘所を配信いたします。
皆様のビジネスシーンや生活の中で、少しでもお役立ていただければ幸いです。

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『今月の人事労務の勘所』
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【 Q 】
定年後再雇用において定年前と全く異なる職種に従事させてよいか
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【 状況 】
当社で30年以上に亘って事務職を勤めてきた労働者を
定年後再雇用することになりました。
再雇用後は給与額も一定程度下げることを踏まえ、
今後は1日4時間の清掃業務に従事させる予定ですが、
何か問題はあるでしょうか。
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【 A 】
当該労働者の希望や貴社の規模等にもよりますが、社会通念上労働者にとって
到底受け入れ難いものであるとして違法と判断されるリスクはあり、
この場合、慰謝料の支払いが必要となることもあり得ます。
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【 解説 】
定年後再雇用時の労働条件について、高年齢者雇用安定法
(以下、「高年法」といいます)は特段の規定をしておらず、
使用者が合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、
継続雇用が成立しなくとも高年法違反とはならないと解されています。

したがって、定年後再雇用時の職務内容を変更したり、
労働時間を縮小することも、原則として使用者の裁量の範囲と考えられます。

もっとも、使用者の提示する労働条件が、労働者に
到底受け入れられないような低いものであれば、
実質的には高年法の趣旨に反するものと評価されることがあります。

例えば、トヨタ自動車ほか事件・名古屋高判平成28・9・28
労判1146号22頁では、定年前は事務職に従事していた労働者に対し、
定年後再雇用後の職務として定年前とは全く異なる清掃等の業務を
使用者が提案したことは、社会通念上労働者にとって到底
受け入れがたいものであり、実質的に高年法の趣旨に明らかに反する
違法なものであるとし、使用者に慰謝料の支払いが命じられています。

同判決においては、会社側が日本有数の巨大企業であり、
事務職としての業務には多種多様なものがあると考えられるにもかかわらず、
清掃業務以外に提示できる事務職としての業務があるか否かを
十分に検討されていない点が指摘されており、
企業規模も考慮要素の一つとされているようです。

定年後再雇用後の職務内容については、労働者の希望や社内の配置状況等を
十分に検討した上で、慎重な判断が必要といえます。

(文責:弁護士 結城 優)

※今月の「人事労務の勘所」のテーマについて、もう少し詳しく知りたい!
という方は、当事務所のHP(ビジネスQ&A)をご覧ください。

ビジネスQ&Aのページはこちら
https://www.loi.gr.jp/knowledge/businesshomu/homu04/pagename180604.html

~ 次回、平成30年7月配信予告 ~
【 Q 】
欠勤した従業員が事後に年次有給休暇を申請した場合の対応は?

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~ 執筆者コラム ~
本文では、定年後再雇用時の労働条件のうち、
職務面(職務内容・労働時間)について取り上げましたが、
実務上、賃金面について問題となるケースが非常に多いです。

この点について、先日、重要な最高裁判決が出ています
(最二小判平成30年6月1日・長澤運輸事件、
裁判所HP:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/785/087785_hanrei.pdf)。

企業としては、上記最高裁判決や法改正の動向も踏まえ、
今後の運用を決めていく必要があるでしょう。

弁護士 結城 優のプロフィールはこちら
https://www.loi.gr.jp/about/lawyer/yuki-yu.html#namelawyer

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