法律Q&A

分類:

会社主催のゴルフコンペで負傷した場合

弁護士 筒井 剛(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2005.11

問題

先日、会社主催のゴルフ・コンペに参加した際に、肉離れを起こしてしまいました。このような災害も業務上災害と認められるのでしょうか。また、得意先から招待された接待ゴルフの際に負傷した場合には、業務上災害と認められるのでしょうか。

回答

 上記いずれの場合においても、原則として業務上災害とは認められない。
解説
1.業務上災害と認められるためには
 労災と認定されるためには、労働者に生じた負傷・疾病・傷害・死亡等が「業務上」生じたと認められる必要があり、行政解釈によれば、傷病が業務上のものと認められるためには、それが「業務遂行中」に、かつ、「業務に起因して」発生したものであることを要するとされています。

 ここで「業務遂行性」とは、当該労働者が労働契約を基礎として形成される使用者の支配ないし管理下にあることをいい、また、「業務起因性」とは、「業務又は業務行為を含めて『労働者が労働契約に基づき事業主の支配化にあること』に伴う危険が現実化したものと経験則上認められる」客観的な因果関係(相当因果関係)が存在することをいいます。

 「業務遂行中」と「業務起因性」の両者の関係は、前者は後者の第一次判断基準をなすと考えられており、前者が無ければ後者は成立せず、前者が存在してもそれだけでは直ちに後者が成立するわけではなく、その成立については独自の検討を要するのです。

 もっとも、業務遂行性が認められれば、特に業務起因性についての反証がない限り、一般に労災と認められる傾向にあります。ここで、業務起因性についての反証とは業務逸脱行為・恣意的行為・私的行為等が挙げられます。

2.会社主催のゴルフ・コンペで負傷した場合、業務上の災害と認められるか
 この場合において判例は、使用者が主催して懇親会等の社外行事を行なうことが事業運営上緊要なものと認められ、かつ、労働者に対して、これへの参加が強制されているときに限り、労働者の社外行事への参加が業務行為になるとしています(福井労基署長事件・名古屋高金沢支判昭和58・9・21労民34-5=6 -809)。

 従って、単に社員間の懇親を目的とした自由参加の社内ゴルフ・コンペや、取引先を招待するものの、労働者の参加が強制されていないゴルフ・コンペにおいて、労働者が負傷した場合には、業務上の災害とは認められません。

 これに対し、ゴルフ・コンペの開催が、事業運営上緊要なものと認められ、かつ、労働者に対して、参加が強制されているゴルフ・コンペにおいて、負傷した場合には、例外的に業務上の災害と認められることとなります。

3.得意先の接待ゴルフ・コンペで負傷した場合は業務上の災害と認められるか
 では、招待された接待ゴルフ・コンペにおいて負傷した場合には、業務上の災害と認められるのでしょうか。

[1] 一般的には否定的

 接待ゴルフについて裁判所は、ゴルフ・コンペへの「出席が業務の遂行と認められる場合もあることを否定できないが、しかしそのためには、右出席が、単に事業主の通常の命令によってなされ、あるいは出席費用が、事業主より、出張費用として支払われる等の事情があるのみでは足りず、右出席が、事業運営上緊要なものと認められ、かつ事業主の積極的特命によってなされたと認められるものでなければならない」とし(高崎労基署長事件・前橋地判昭和50・6・24労判 230-26)、そのようなゴルフ・コンペで負傷した場合に、原則として業務上の災害とは認められないとしています。

[2] 例外的に労災と認定

 もっとも、近時の裁決例では、「ゴルフ・コンペは仕事の一環」とみなし得るとして、労基署の業務外との判断が覆されたものがあります。即ち、営業担当の社員が顧客との商談を兼ねたゴルフ・コンペに参加するためゴルフ場に向かう途中に交通事故で死亡した事案で、「ゴルフ・コンペは仕事の一環」とみなし得るとしたのです(東京労働基準局・労災保険審査官平9.3.1)。この裁決も上記の先例の延長線上にあるとは言え、若干の認定の緩和が読み取れます。

[3] 結論

 しかしながら、結論としましては、招待された接待ゴルフ・コンペ参加に際しての負傷は業務上の災害とはならないものというべきでしょう。即ち、本人がプレーをしない会社の担当者として準備接待、送迎等に当たる係員は別として、本人自身もプレーする場合は、そこで重要な取引の交渉が具体的に行われる場合とか、事業にとって具体的な課題と必要性がある場合など極めて例外的な場合の負傷に限って業務上の災害と認められるにすぎないものと考えます。

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