法律Q&A

分類:

賃金の未払い・不払いがあるときはどうするのか?(P5-8)

(1)労基法上の履行の強制
 労基法は、賃金について全額払いや一定日払いの原則を定め(24条。P5-2参照)、それらを監督行政と罰則(120条、30万円以下の罰金)によって使用者にその履行を強制させようとしています。従って、賃金不払等に対しては、これらの実行を求めることができます(同104条)。しかし、使用者が真に支払不能となった場合には実効性を期待できません。そのような場合には、労基法違反の刑事責任を追及することも困難となります。
(2)民商法による先取特権の付与
 賃金債権については、民商法で一般先取特権等の付与がなされています。先ず、民法によれば「雇人」(雇用契約によって労務を供給するもの)は「最後ノ6 カ月間の給料」につき「債務者ノ総財産の上に先取特権ヲ有ス」(306条、308条)とされています。次に、株式会社、有限会社、又は、相互会社とその使用人(従業員)との間の雇用関係に基づき生じた債権を有するものは会社の総財産の上に先取特権を有する(商295条、有限46条、保険59条)、とされています。即ち、これら三会社の被用者については、民法上の一般先取特権(306条)のように「最後ノ6カ月間ノ給料」に限定することなく、全未払い賃金債権につき一般先取特権が付与されています。
そこで、労働者自ら、これらの先取特権に基づく差押・配当要求(民事執行法181条[1]項4号等)や賃金支払の訴訟提起などにより回収を図っていく方法もあります。未払額が30万円以下であればいわゆる少額訴訟の利用もできます(民事訴訟法368条以下)。
(3)賃確法上の未払賃金立替払制度の利用
 以上の通り、賃金については一般先取特権が認められています。しかし、多くの倒産の場合には、現実には、金融機関の抵当権や税金や社会保険などに比較して賃金債権は優先権を持たず、企業から賃金を確保することが困難な場合が少なくありません。このような場合、以下のように、「賃金の支払の確保等に関する法律」(賃確法)により一定の立替払を国から受けることができます。立替払いを適用される事業主の要件は、労災保険の適用事業の事業主であって、1年以上の期間にわたって当該事業を行っていたものが次のいずれかに該当することです。[1]破産の宣告を受け、又は特別清算の開始命令を受けたこと[2]更生手続開始の決定、民事再生手続開始の決定又は整理開始の命令を受けたこと、又は、[3]中小企業の場合、その事業活動が停止し、再開の見込みがなく、かつ賃金支払能力が無いことが労働基準監督署によって認定されたこと(賃確法7条・同施令2条、同施規8条)。
そして立替払いを受けられる労働者の条件は、前記[1]、[2]の申立があった日又は[3]の認定の申請が退職労働者によりなされた日の6箇月前の日以降2年間に、以上のような要件を満たす事業主から退職したことです(賃確法7条、施令3条)。以上のような要件を満たす労働者に対しては立替払い措置が行われるのですが、この立替払いの対象となる賃金は、退職日の6ヶ月前の日以後立替払いの請求の前日までの期間において支払日が到来している定期給与及び退職金であって、その総額が2万円以上であるものです(賃確法7条、施令4条2項)。実際に立替払いが行われる賃金の額は,立替払い対象賃金中の未払い分の 80%に相当する額です(施令4条1項。なお、退職時の年齢に応じて一定の上限が設けられています)。
(4)退職労働者の賃金に係る遅延利息
 賃確法は、会社の通常の未払い賃金への遅延損害金が年6%のところを(商法514条)、退職労働者に対する賃金不払いについては特則として、年 14.6%と定め、その履行を促がしています(同6条1項等)。但し、この特則は賃金の支払の遅滞が天災地変その他のやむを得ない事由ある場合には適用されません(同条2項)。

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