法律Q&A

分類:

事業譲渡

弁護士 結城 優 2016年4月:掲載

事業譲渡をする場合又は事業譲渡を受ける場合の法的手続を教えて下さい。

多角経営が失敗して経営不振に陥っているY社から、採算部門である製造部門の営業を譲り受けようと思っています。どんな手続が必要ですか。

事業譲渡をする場合は株主総会の特別決議が必要です。一部の事業譲渡を受けるには取締役会の決議が必要です。

1.概観
 はじめに、平成17年改正前商法では、「営業」の譲渡等としていたのを、会社法は「事業」の譲渡等と概念を改めましたが、これは用語の整理に過ぎず、規制の実質に変更はありません。さて、自社の「事業の全部又は重要な一部の譲渡」を行う場合、及び「他の会社の事業の全部の譲受」の場合については、株主総会の特別決議(議決権を行使可能な株主の議決権の過半数を定足数とし、出席株主の議決権の3分の2以上にあたる賛成が必要とされる)が必要とされています(会社法467条1項、同法309条2項11号)。これらは、会社の命運を左右する取引行為であって、株主の利益に重大な影響を与えるものであると考えられているからです。
これに対し、自社の重要財産を他社に譲渡する場合、及び他社からその重要財産を譲り受ける場合には、取締役会の決議で足りるものとされています(同法362条4項1号)。
2.事業譲渡の意味
 会社法467条の「事業」をどう捉えるかには考え方の違いがあります。判例は、「事業の譲渡」とは、①一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部又は重要な一部を譲渡し、②譲渡会社がその財産によって営んでいた事業活動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継がせ、③それによって譲渡会社が法律上当然に、改正前商法25条(会社法21条に相当)に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいう(最大判昭和40年9月22日民集19巻6号1600頁)と判示しています。上記判例の解釈は学説上様々であり、上記①~③のいずれも不可欠の要件であると解する見解も少なくありませんが、上記③は「事業の譲渡」の要件ではないと解する見解もあります。また、上記②も不要であり、上記①のみで「事業の譲渡」の要件としては十分であるとする見解も有力です。
3.手続
 事業譲渡を行い又は受ける場合には、事業譲渡の要領を記載した株主総会招集通知を株主に対して事前に発送し、株主総会における特別決議によって決定し、右決議に反対する株主から会社に対して株式の買取請求があった場合には会社は右株式を買い取らなければなりません(会社法469条・470条)。ただし、事業の全部の譲渡において、譲渡の承認決議と同時に会社の解散を決議(同法471条3号)した場合には、譲渡会社の反対株主には株式買取請求権が与えられないため、注意が必要です(同法469条1項但書)。さらに、事業譲渡は通常の取引法上の契約ですので、事業に属する個々の資産については個別に移転手続(不動産の登記等)をする必要があります。なお、総会決議のない事業譲渡は原則として無効と考えるのが判例の立場で、しかもその無効は相手方(譲受人)からも主張できると解しています(最判昭和61年9月11日判時1215号125頁)。もっとも、譲渡後長期間を経過してはじめて無効を主張するような場合には、例外的に、信義則により当該主張は禁じられることがあります。

4.親会社による子会社株式等の譲渡(平成26年改正) 平成26年改正会社法においては、株式会社は、その子会社株式等の全部または一部を譲渡する場合で、事業譲渡と実質的に類似するような場合には、当該譲渡の効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって当該譲渡に係る契約の承認を受けなければならないものとされました(会社法467条1項2号の2)。事業譲渡と実質的に類似するような場合とは、具体的には、「当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えるとき」であって、かつ、「当該株式会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき」をいいます(同号イ及びロ)。この場合、事業譲渡に関する会社法468条~470条の規律も適用されます。

対応策

事業の一部の譲受けであっても、代表取締役が単独で決定することはできません。重要な財産の譲受けは、取締役会にはかって決議で決定しなければなりません。譲り受けに当たっては、個々の資産を譲り受けるのか、組織ごとに譲り受けるのかを明確にしておかなければなりません。

予防策

事業の譲受人が、商号を続用する場合(会社法22条)又は譲渡人の事業によって生じた債務を引き受ける旨を広告した場合(同法23条)には、譲受人は、一定の期間、譲渡人の債務について弁済の責任を負いますので、注意が必要です。また、事業の譲受については独禁法16条の規制(事業譲受けの制限、事前届出制)もありますので、忘れないように注意が必要です。
なお、会社分割については〔4-4-4〕をご参照下さい。

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