法律Q&A

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強制執行 債務名義の種類

弁護士 菊地 健治
1997年4月:掲載

支払いをしない債務者から強制的に債権回収するためにはどうすればよいでしょうか。

当社の取引先で支払いを全くしないところがあります。財産はいっぱいあるようなので、これらの財産から強制的に回収できれば、と思っております。どのようなものがあれば強制的に回収できますか。

強制執行を簡単に行うために公正証書で契約書を作成します。

1.
  設問[5-1-1]の解説でも触れましたが、日本においては、債権者が債務者の不払いがあったときに、勝手に債務者の所有物を持ち出したりすることを認めていません(したがって、このようなことをすると債権者であっても、住居侵入罪とか、窃盗罪で刑事処分を受けることになります)。
したがって、債務者が弁済をしてくれないときには、一定の手続を経て、債務者の財産を差押え、競売にかけるなどの手続をとらなければなりません。
このような手続を強制執行(単に「執行」というときもあります)といいます。
2.
 強制執行は、契約書さえ作っておけばできるというものではありません。債権があることを公的に証明した文書を用意する必要があります。そして、この文書を裁判所に提出して、裁判所に所属する執行官と呼ばれる人によって強制執行が行われます。
このような債権があることを公的に証明し、且つ強制執行を行うことができる書面を債務名義といいます。
どのような書面が債務名義になるかは、民事執行法22条に規定がありますので、代表的な債務名義について以下に説明をいたします。
3.確定判決(民事執行法22条1号)
 一番一般的なのは、裁判所に支払い請求の訴訟を起こすことです。そして、この裁判が確定したときには、その判決が債務名義になります。
裁判の確定とは、敗訴した側が上級の裁判所(地方裁判所の判決に対しては、高等裁判所、高等裁判所の判決に対しては最高裁判所)に通常の手続で不服の申立(控訴や上告)ができなくなることをいいます。
つまり控訴や上告の期限(判決の送達を受けてから二週間以内)内に控訴、上告の申立がなかったときですとか、最高裁判所に上告しても、最高裁判所の判決 が出されたときには、それ以上の上級裁判所がありませんから、その判決が出されたときには判決が確定します。
4.仮執行の宣言のついた判決(民事執行法22条2号)
 しかし、裁判の確定を待っていては、あまりにも時間がかかるため、権利救済が遅れてしまいます。そこで、単純な金銭の支払い請求訴訟などでは、仮執行の宣言のついた判決であれば、判決の確定を待たなくても、その判決が債務名義になります。
仮執行宣言は、判決の主文の末尾に「この判決は仮に執行することができる」などと書いてありますのでこれで分かります。
仮執行とはいいますが、民事保全上の仮差押や仮処分とは異なって、本差押をすることができ(つまり保証金などは必要ありません)、ただ、まだ確定していない権利関係が終局的に決定していない仮の状態での執行ですから仮執行というだけですので、執行においては確定判決と何ら効力には変わりはありません。
5.執行証書(民事執行法22条5号)
 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものをいいます。
公正証書は、公証人が作成する文書ですが、このような要件が整っていれば、わざわざ判決を得なくても強制執行をすることができます。
実務的には公正証書で契約書を作成することを条件に金銭の貸借契約を行うことがよくありますが、これは貸主がいざというときに裁判にかける回収の手間を省くために利用するものです。
公正証書が債務名義になるには、金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求であることと、債務者が強制執行されても異議を述べない旨が公正証書に入っている必要がありますが、公証役場に行けば、公証人がこの文言の入った公正証書を作成してくれます。
6.確定判決と同一の効力を有するもの(民事執行法22条7号)
 確定判決ではなくても、法律によって確定判決と同一の効力を与えられ、債務名義になるものがあります。
代表的なものは、裁判上で和解が成立したときに和解の内容を記載する和解調書や、民事調停が成立したときに調停内容を記載する調停調書です(民事訴訟法267条、民事調停法16条)。
その他に、裁判所以外の紛争処理機関がすすめた紛争処理のあっせん、調停の結果を記載した書面のなかでも、裁判上の和解調書と同一の効力を与えられているものがあります。
7.強制執行の実施方法
 強制執行は、債務名義に執行文というものを付して、裁判所に差押や競売の申立をすることで手続が進行します。執行文は、債務名義が判決や和解調書の場合には、その判決や和解が成立した裁判所で、執行証書ならばその原本を保存する公証人から付与を受けます。
しかし、強制執行の申立をしてもすぐに金銭的な満足が得られるわけではありません。特に不動産の競売の場合には、執行官の人手不足と、競売にかけてもそれを買い受ける人がいないために時間がかかり、手続が終了するまでに1、2年かかるといった状態がバブル崩壊後慢性的な状況になってきています。

対応策

債務名義を取得するのには、一般的に裁判上の手続や調停手続を経なければなりませんので、時間と費用がかかることを覚悟しなければなりません。
その点、公正証書を作成しておけば、面倒な手続を経ることなく、強制執行手続に入ることが出来ます。
公正証書が即債務名義になるものは、限定されていますが、単純な金銭の貸借契約や、債務の弁済契約を締結する場合には、公正証書にしておけば、後日の債権回収のときに簡単な手続で強制執行をすることができますので、是非利用してみることをおすすめします。

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