法律Q&A

分類:

加工食品メーカーのPL責任

弁護士 村林 俊行(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載

加工食品メーカーのPL責任はどのような場合に生じ、それを予防するためにはどのような対策が必要か?

当社は、惣菜を製造してレストランやホテルに卸していますが、当社製造の惣菜が原因で食中毒事故が発生した場合、当社はいかなる責任を負うのでしょうか。またそのような責任を免れるためにはいかなる対応が必要でしょうか。

貴社の惣菜製造段階で食中毒の原因が発生していた場合には、貴社はPL法上の責任を負うこととなり、それを予防するには生産工程の見直し等が必要だが、一般消費者の認識とのギャップには注意して下さい。

1.食品メーカーのPL法上の責任
 惣菜も「製造又は加工された動産」(PL法2条1項)といえますから、PL法の対象となります。従って、貴社の製造した惣菜が原因で食中毒が発生した場合で、貴社が惣菜を製造した段階で既に食中毒の原因が発生していたのならば、貴社はPL法上の責任を負うこととなります。PL法の個々の要件の意味については設問[8-1-1]を参照して下さい。これに対し、貴社の製造した惣菜が原因で食中毒が発生した場合にも、レストラン等への納入後の保管状態が悪かったことが原因で食中毒が発生したのならば、貴社に責任があるとはいえず、レストラン等のみ責任を負うこととなります。
2.食品衛生法上の規制遵守とPL法上の責任
 科学的合成物である食品添加物は、無制限に使用されると人体に重大な影響がありうることから、食品衛生法は厚生大臣が定める物以外の添加物を食品に使用することを禁止しています。しかし、食品衛生法は遵守すべき最低規準を定めただけであり、これを守ったからといって責任がないということはいえません。PL法4条1号は「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと」を証明できれば製造業者は責任を免れる旨規定していますが(開発危険の抗弁)、食品はそれを摂取するときには人の生命、身体に重大な侵害を与えることともなりますから、前記開発危険の抗弁の適用も厳格に考えざるを得ません。従って、わが国においては使用可能な添加物であっても諸外国において使用が禁止されている場合には、その添加物を使用した結果食中毒が発生したのならば、製造業者としての責任を問われることも考えられます。
なお、後述のように食品衛生法だけでは工程管理手法等PL対策上必要な部分が欠落していることにも配慮する必要があります。
3.責任主体相互の関係
 貴社がPL法上の責任を負う場合においても、【1】貴社のみに責任がある場合と【2】レストラン等にも責任がある場合とが考えられます。まず【1】の場合には、貴社は被害者に対してPL法上の責任を負います。また、レストラン等に対しても、貴社は惣菜の納入契約を締結していますから、その債務不履行責任(不完全履行責任)として、損害賠償責任を負います。
次に【2】の場合には、レストラン等もPL法や民法に基づいて損害賠償責任を負うこととなり、レストラン等のPL法及び不法行為(民法709条)に基づく責任は、貴社とは被害者に対して不真正連帯債務を負う関係となります。従って、レストラン等が被害者に全額賠償した場合には、レストラン等は過失割合に応じて、貴社に対して求償してくることが予想されます。

予防策

PL法上の責任追及への対応としては、第1に、生産工程の見直しと改善をすることが必要です。特に、自社の管理方式だけで対処している会社では、費用との兼ね合いもありますが国際的に認められているHACCPやISO9000等の方式を採用することも一考に値するといえます。第2に、PL訴訟等があった場合のPL費用の担保の担い方については、まず製品安全協会が行っているSGマーク制度、食品衛生協会が行っている食品営業共済制度及び食品産業PL共済等の活用が考えられますが、高額賠償への対応が困難である等の問題があります。そこで、税法上支出保険料は全額損金計上が認められており、契約者からすれば当該保険料は製造又は加工上のコストとして製品原価に計上することが可能であることをも考慮すると、損害保険会社が行っているPL保険への加入が設計次第では適当な方法といえます。第3に、PL責任制度についての社内教育が必要となります。まず、一般社員教育においては、一般社員がPL責任の知識につき一般人と大差ないことを前提にPL制度の概略を正確に理解させること及び窓口等での一次的な対応の仕方につき指導する必要があります。次に、経営陣に対しては、PL予防対策、訴訟対策等リスクマネージメントの一環としてなす必要があるでしょう。第4に、商品に対する警告表示のあり方が問題となりますが、この点については、問題169を参照して下さい。ただ、ここで注意しなければならないことは、一般消費者と業界の認識の違いは会社内ではわかりかねることです。そこで、営業担当や消費者窓口等を通して消費者の情報を絶えず受け入れ、その情報が正確且つ迅速に経営陣に伝達できるような体制を作り、拡大損害を未然に防ぐべく警告表示等にも生かせるようにしておくことが必要といえます。第5に、将来の訴訟等に充分対応するためには、関連文書(録音テープ、写真等を含む)の管理を充分にすることが必要です。前記のISO9000等の品質管理が困難だとすれば、食中毒の特徴をふまえ、原材料の受入時、加工処理場の衛生検査、金属探知機のチェック等の点に関する文書を管理することは、最低限必要といえるでしょう。

関連タグ

身近にあるさまざまな問題を法令と判例・裁判例に基づいてをQ&A形式でわかりやすく配信!

キーワードで探す
クイック検索
カテゴリーで探す
新規ご相談予約専用ダイヤル
0120-68-3118
ご相談予約 メルマガ登録はこちら