法律Q&A

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一時退職後の復帰

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2002年11月:掲載

希望退職・早期退職者優遇制度で優秀な人材流出の防止するにはどうしたら良いか?

今回、A大学より寄付講座開設の依頼があり、B社より2年間の期間、2名の社員を講座の教授および助教授として派遣することになりました。派遣されるC 本人たちの給与は、講座開設費用としてA大学へ払う寄付金からまかなわれる予定です。ただし、A大学側からは2年間の間は、B社を退職した形でないと教員として採用できないとの連絡がありました。B社には、「公職就任に伴う休職」という規定はあるのですが、一端退職した形で外に出すのは初めてであり、期限付きの退職扱いというものが社員に対してできるのかどうか。また、そうなった場合の本人たちへの処遇はどのようなことが必要なのか。教えて頂けないでしょうか?

まず、このような一時退職・転籍が、就業規則に定めがあっても、一方的に会社の都合で命令できないことは明らかです。このような措置には労働者の同意が不可欠です。つぎに、一時退職とその後の復帰に関しては、A大学の求める退職のレベルによって変わってきます。完全な退職とすれば、退職金の精算をし、復帰後の勤続通算も認めてはならないことになりかねません。そのようなことまで求められていなければ、少なくとも、企業内では、形式的には転籍であっても、実質的には出向休職と同様な方法もあり得ます。しかし、税法上や社会保険上の手続等で困難な問題が生じる場合があるでしょう。

1.一時退職の意味
 質問のようにA大学が求める通り、B社をCらが退職し、A大学に2年間の期間雇用で(労基法14条1号~3号に該当しない限り、原則は1年更新の2年限度とすることになるでしょう)、採用されるというのは、法的には、2年間の期限付き転籍と言えます。
2.転籍には同意が必要
 この転籍は、労働契約関係の当事者がまったく代わってしまうので、仮に、転籍を命じることができる就業規則の定めがあっても、原則として、労働者の同意が必要です(2基礎編5参照)。
 同意がある限り転籍自体は、期間付きであろうが、期限なしであろうが自由にできます。
3.復帰後の問題
 問題は、復帰後の処理です。ここでは、回答に記載しましたように、A大学の求める退職のレベルによって変わってきます。
 A大学が求めているのが、CらのB社の影響力からの完全な離脱にあり、文字通りの退職とすれば、B社では、退職金の精算をし、復帰後の勤続通算も、それでは、休職と実質的に変わらないとして、認められないことになりかねません。そうとすれば、復職は、完全な新規再雇用となり、処遇も、原則としては、他の中途採用者と同様になり、社会保険等についても、再加入(被保険者資格の再取得手続)となります。しかし、このような措置は、B社が年功的賃金制度を取っている場合には、賃金・退職金等の面で、また、年休などの面でも、不利益となります。特に、A大学が、官公庁などでは、公務員共済などからの変更で保険制度が異なり不利益が大きくなります。
 A大学が、そのようなことまで求めていなければ、少なくとも、企業内では、形式的には転籍であっても、実質的には出向休職と同様な方法もあり得ます。つまり、形式的は、転籍となるが、転籍中の勤続通算をし、退職金の支給も最終退職確定時、例えば、復帰後の退職時や復帰しないことが確定した場合などとすることです。さらに、この場合には、復帰しなかった場合には、転籍期間を勤続通算しないなどの諸規定の整備が必要となるでしょう。
 なお、このようなケースで起こりがちなのが、Cらが、2年経過後に、A大学のスタッフになってしまったり、他の研究施設や大学に引き抜かれたりすることがあり得ます。しかし、いずれの場合にも、形式的には、退職しているため、復帰命令は、それ自体は無効であり、せいぜい実質休職型の後者の際に、前述の退職金通算をしないなどの間接的な拘束しかできないということです。
 また、前述の社会保険の切替や、転籍中の勤続通算などには、税法上や社会保険上の手続で困難な問題が生じる場合があるでしょう。

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