法律Q&A

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生理休暇の濫用への対処

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2000年10月:掲載(校正・深津 伸子2007年12月)

生理休暇の取り過ぎ・濫用が目立ってきたらどうするか?

A社では生理休暇が年24日と決められ、給与も一100%支払われていました。ところが、A社の女子従業員Bらの生理休暇の取得率は同業他社に比べて異常に高く、その使われ方も月によっては2週間以上使い切り、他はゼロの月が重なり、祭日の近くに連続して取られたりと不自然な取り方をしていることが分かりました。A社はBらの生理休暇の濫用に対しどう対処したら良いでしょうか?

就業規則の改正により、無給化などを図るべきです。

1.就業が著しく困難な場合の生理休暇
 生理休暇というと、女性の中には生理になれば当然に休暇が取れるものと思っている向きがあります。しかし、これは間違いです(昭和61・3・20基発151)。労基法が定めているのは「生理日の就業が著しく困難な」女子が休暇を請求したときにその者を生理日に就業させてはならないとしているに過ぎません(労基法68条)。そもそもこの制度は世界的にも珍しい制度である上、生理休暇の医学的根拠にも疑問が提起されています(労働省の労基法研報告・昭和53年11月)。現在の制度では、生理休暇は就業が著しく困難な場合における病気休暇等の一種であるとされ、現行法が保障するのは、個人的体質やその時の体調その他の状況により個々的に「生理日の就業が著しく困難な」女子が請求できる休暇となっています。その「就業が著しく困難」かどうかについては、診断書までは求めることは妥当ではないとされていますが、同僚の証言等による証明を求めることは公平な運用なために許されています(昭和63・3・14基発150)。しかし、長期の生理休暇が求められたような場合には、他の私傷病と同様に診断書を求めることは可能かつ必要でしょう。
2.生理休暇に賃金は不要
 又、労基法が求めているのは、以上のような状態になった場合の就業からの解放だけで、生理休暇中の賃金については、協約・就業規則などに別段の定めがないときは無給となります。又、休暇日を精・皆勤手当の算定において欠勤扱いとする取扱いについては、判例は、生理休暇について、一般の生理日の賃金と同様当事者間の取決めに委ねられた問題であって、生理休暇の取得を著しく抑制しない限り労基法上も私法上も違法でない、としています(【1】エヌ・ビー・シー工業事件・最三小判昭和60・7・16民集39-5-1023)。これに対して生理休暇の取得日を昇給・昇格の要件としての出勤率の算定にあたり欠勤日扱いすることについては、生理休暇保障の趣旨に照らせば無効であるとされています(【2】日本シェーリング事件・最判平成元・12・24民集43-12-1895)。ただし、一律に賞与の全額不支給や一律昇給停止等を行うのではなく、あくまで、生理休暇等の結果の能力の低下を理由とする場合や、取得された生理休暇等の日数を客観的に按分対応した限りでの減額等の不利益は違法とされません([3]学校法人東朋学園事件・最一小判平成15・12・4労判862-14)。
3.有給率制限の合理性はある
 又、設問のような生理休暇の濫用があった会社で就業規則を改正して、有給の生理休暇を年24日から月2日に変更し、有給の率も100%から68%へと変更したケースでは、変更により従業員の被る不利益の程度が僅少であること、当該変更との関連で賃金の大幅な改善が行われたこと、旧規定下では生理休暇取得が濫用される状況にあったこと、生理休暇制度の根拠については社会的にも疑問が出されている状況であったことなどの事情から、変更は内容及び必要性のいずれの点でも十分な合理性があり、改正規則は有効であるとされています(【4】タケダシステム事件・最二小判最判昭和58・11・25労判418-21、同事件差戻審・東京高判昭和62・2・26労民38-1-84)。

対応策

設問の場合、【4】事件の場合と同種の生理休暇の濫用が想像できるケースで、次のような対処が可能でしょう。第一には、生理休暇の申請書に「生理により就業が著しく困難」となったかどうかについて、その症状を具体的に申告させ、上司及び先輩格の女子従業員の証明書を添付することを運用として義務付け、この手続によらない生理休暇の申請については、年休としての振替に応じない限りは欠勤として対処することを宣告し、実行することです。この範囲の対応は、就業規則の改正をまたずとも事前の警告の上でなら実行可能です。第二に、【1】事件、【3】事件及び【4】事件の判決を利用して、就業規則を改正し、賃金アップと引き替えに精皆勤手当を導入し、生理休暇の取得者は、同手当の取得上は欠勤扱いとし、生理休暇の有給率を引き下げ又は無給とし、又、生理休暇等の結果の能力の低下を理由とする場合や取得生理休暇日数を按分対応した限りでの昇給、賞与の減額等を行い、少なくとも有給日数を制限することです。これらの改正規則を無視した者に対しては厳正に欠勤による賃金カットや懲戒処分で対処することとなります。なお、就業規則の改正については、所定の手続を忘れないことです(設問10-4-3参照)。但し、濫用者ではなく本当に就業が著しく困難な女子従業員への適切な配慮を忘れて、女子従業員からの余計な反発を招いて、モラール(士気)の低下を招かないように、公正な対応・運用が必要なことは勿論です。

予防策

生理休暇の趣旨や医学的問題点を踏まえた就業規則の整備とその運用についての管理職の認識と運用基準の明確化・適正化のためのツールとしての生理休暇申請書の書式の整備などが必要でしょう。

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