法律Q&A

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退職代行への対応

弁護士 中野 博和(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2019年12月掲載

退職代行業者と名乗る人物から、当社の従業員が退職する意向であるとの連絡が来ました。これに対して、当社としては、どのように対応すればよいでしょうか。

退職代行者が弁護士であるか否かを確認し、弁護士である場合には、代理権があることを確認した上で、その弁護士を窓口として退職手続を進めることになります。
他方、退職代行者が弁護士でない場合は、従業員本人に直接連絡をとり、その退職意思を確認した上で、退職手続を進めるべきです。

1 退職代行を行った者が弁護士である場合
 退職代行者が弁護士である場合、会社としては、代理権を確認する必要があります。代理権が確認できれば、当該退職代行者には、退職代行を行う権限があるので、その者を通して退職手続を進めていくことになります。他方、代理権がなければ、退職代行の権限があるとは言えないので、会社は、これに応じる必要はありません。
2 退職代行を行った者が弁護士でない場合
(1)弁護士法72条違反か否か
 弁護士法72条は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と規定しています。
 「法律事務」とは、法律上の効果を発生、変更する事項の処理や、法律上の効果を保全、明確化する事項の処理をいうと解されています(東京地判平29・2・20判タ1451号237頁)。
 期間の定めのない労働契約の場合、労働者は2週間前などの必要な予告期間をおけばいつでも解約の申入れをすることができます(民法627条1項参照)。他方、期間の定めがある労働契約の場合、労働者はやむを得ない事由があるときに契約を解除することができます(民法628条参照)。
 退職代行者が、従業員に代わって会社に対し、退職の意思を伝えることは、民法627条1項ないし民法628条の法律効果を発生させることになりえます。退職代行者の行為によって、意思表示が会社に到達するためです。そのため、従業員の意思を会社に伝えることは、退職代行業者を使者として捉えたとしても、「法律事務」にあたる可能性が高いです。
 したがって、弁護士でない退職代行者が、従業員に代わり、会社に対して退職の意思を伝えることは、弁護士法72条に違反する可能性が高いといえます。
 また、退職代行者が、従業員の退職の意思を会社に伝えるにあたって、当該従業員の有休の処理等について交渉することもありますが、これは、年休権の行使という法律効果が発生する事項の処理に当たりえますので、「法律事務」に該当し、弁護士法72条に違反する可能性が高いといえます。
(2)弁護士法72条違反の効果
 判例は、弁護士法72条に違反する委任契約の効力について、民法90条に照らし無効となる旨判示しています(最判昭38・6・13民集17巻5号744頁)。そのため、弁護士法72条に違反する退職代行契約は無効となり、退職代行を行う権限は認められないので、会社は、退職代行自体には応じる必要はありません。
(3)まとめ
 以上より、退職代行を行った者が弁護士でない場合、退職代行業者ではなく、従業員本人に直接連絡をとり、退職手続を進めるべきです。

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