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退職勧奨が違法とされるのはどのような場合か?②

弁護士 石居 茜(ロア・ユナイテッド法律事務)
2022年2月

退職勧奨が違法とされるのはどのような場合か?

勤務態度や業務能力に問題がある従業員がいます。
できれば辞めて欲しいと思っているのですが、退職勧奨をしてはいけないのでしょうか。
また、退職勧奨をするときには、どのような点に注意すればよいでしょうか。

退職勧奨すること自体が違法であるとはいえないとされていますが、退職に応じるかどうかは、従業員の自由な意思に委ねられるので、退職勧奨に当たっての説得の手段や方法が社会通念上相当と認められる範囲を超え、従業員の自由な意思形成を不当に妨げるような態様でされた場合には、その人格権を侵害するものとして違法となる場合があります。

 裁判例においては、退職勧奨すること自体が違法であるとはいえないとされていますが、退職に応じるかどうかは、従業員の自由な意思に委ねられるので、退職勧奨に当たっての説得の手段や方法が社会通念上相当と認められる範囲を超え、従業員の自由な意思形成を不当に妨げるような態様でされた場合には、その人格権を侵害するものとして違法となるとされています(日本アイ・ビー・エム事件・東京地判平成23.12.28・労経速2133号3頁等)。

 では、裁判例では、具体的に、どのような場合に違法とされているのでしょうか。

 裁判例を見ると、多数回、長期にわたり退職勧奨を実施した事案(エム・シー・アンド・ピー事件・京都地判平成26年2月27日・労判1092号6頁)、従業員が退職しないと述べているにもかかわらず、その後も退職勧奨を実施した事案(日本航空(雇止め)事件・東京高判平成24年11月29日・労判1074号88頁、日立製作所事件・横浜地判令和2年3月24日)、そもそも、合理的な理由なく、従業員を退職に追い込むために不合理な業務命令等を行い、その結果退職勧奨を行って退職に応じさせた一連の行為が違法とされた事案(学校法人須磨学園ほか事件・神戸地判平成28年5月26日・労判1142号22頁)、退職か解雇かの2つに1つであるなどの説得行為が行われた事案(上記エム・シー・アンド・ピー事件)、従業員に対し、他の部署での受け入れが不可能など退職以外の選択肢がないような発言をし、単に業務の水準が劣る旨を指摘したにとどまらず、執拗にその旨の発言を繰り返した上、能力がないのに高額の賃金の支払を受けているなどと、従業員の自尊心を殊更傷付け困惑させる言動をした事案(上記日立製作所事件)、言葉を荒げたり、高圧的態度を伴うものではないが、職員としてふさわしくない、任せられる仕事はない、ふさわしい仕事は職場外の他の場所にある等の合理的理由のない非難や、職場から排除する発言を繰り返した事案(公益財団法人後藤報恩会ほか事件・名古屋高判平30・9・13労判1202号138頁)などが違法とされています。

 退職勧奨を行う場合には、違法とならないよう、発言や方法に留意する必要があります。

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