法律Q&A

分類:

労災認定をめぐる行政訴訟への事業主の補助参加の可否

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.06.17

問題

A社のB労働者の過労死についてBの遺族がした労災保険給付の申請が認められなかったため、B遺族がC労働基準監督署長を被告として行政処分取消訴訟(労災行訴)を提起していますが、この裁判の結果は、B遺族らのA社に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求などに影響すると聞いています。この訴訟に A社が関与して、安易な労災認定がなされることを防ぐ手段はないでしょうか。

回答

 A社が労災保険徴収法(徴収法)上、いわゆるメリット制の適用を受ける規模等の条件を満たす場合には、A社は、民事訴訟法上の補助参加人として労災行訴で、C署長を補助することができます。それ以外の場合については議論があります。
解説
1 事業主の補助参加をめぐる問題
 労災保険法上、保険給付の申請が認められなかった場合、労働保険審査官、労働保険審査会の二回にわたる審査請求を行なった上でも、被災労働者または遺族(労働者等)がその結果に不満である場合に初めて、処分した労働基準監督署長を被告として労災行訴を提起することができますが、この間の不服申立手続には事業主の参加は認められていません。しかし、労災認定は実際上、事業主のいわゆる労災民事責任を導き易くし、いわゆる労災上積み補償制度等の適用要件となるなど、労災行訴の結果は事業主にとっても事実上・法律上の利害関係を有するものです。ところが、事業主が監督署長を補助するため労災行訴に参加することの許否について従前あまり議論されていなかったところ、最高裁判所が、レンゴー事件(最一小決平 13.2.22労判806-12。本決定)において、初めて、一定の要件の下での参加を認めるとの判断を示しました。
2 参加の要件
 その一定の要件とは、徴収法のメリット制による保険料増額の可能性です。徴収法 12条3項は、事業主の負担の具体的公平を図る等の目的のため、その事業の業務災害に関して行われた保険給付額に応じて保険料を変動させるメリット制を採用しています。具体的には、一定規模以上の事業においては、業務災害に関して行われた保険給付の額が増減した場合には、労災保険料率を一定範囲内で引き上げ又は引き下げるものとされているので、労災保険給付の不支給決定の取消判決が確定すると、労災保険給付の支給決定がされて保険給付が行われ、次々年度以降の保険料が増額される可能性があります。そこから、本件決定は、事業主は、労災行訴に参加をすることが許されるとしたのです。

 しかし、本件決定によれば、メリット制の適用を受けない中小零細企業においては、損害賠償の危険があっても、参加の利益が否定されることになります。その判断には疑問がありますが、実務的にはこれに対応しなければなりません。なお、各企業内で、労災保険給付とは別に、いわゆる労災上積み補償規定などに基づき、保険給付を上回る補償制度が設けられている場合に労災認定は直ちに事業主の同規定に従った補償債務を発生させることになり、事業主が、その上積み補償債務を回避すべく、労災行訴への参加が認められることになるものと考えられますが、これらは判例上では決着していません(詳細については拙稿「労災認定をめぐる行政訴訟への事業主の補助参加の可否・当否」労判 820-5参照)。

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