法律Q&A

分類:

研修旅行中の災害

弁護士 村林 俊行(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.06.19

問題

甲は、A社に勤務していましたが、A社の任意参加の研修旅行に行った帰途、航空機事故により死亡するに至りました。このような場合には、甲の遺族は遺族補償給付等の受給はできるのでしょうか。

回答

 遺族補償給付等の労災保険給付を受けるためには、従業員の死亡が業務遂行中に(業務遂行性)、かつ、業務に起因して発生したもの(業務起因性)であることが必要である。しかし、本件において甲は、A社の任意参加の研修旅行中に死亡していることから、A社の支配下にないときに災害に遭遇しているものといえる。従って、甲の研修旅行への参加には業務遂行性が欠けるので、甲の遺族は遺族補償給付等の労災保険給付を受けることができないこととなる。
解説
1 労災認定の要件
 労災認定がなされるためには、災害が「業務上」生じたものでなければならず、具体的には災害につき「業務遂行性」と「業務起因性」の双方を有することが必要となります。また、災害が「業務遂行性」を有するものといえるためには、災害が起こったときに被災労働者が労働契約を基礎として形成される使用者の支配下にあったと認められることが必要となります。
2 研修旅行と業務について
 我国の企業においては、社内で研修旅行を催したりすることがままありますが、これらの催しは従業員の労務管理上有効な手段とはいえますが、本来の業務の遂行ではないし、その業務に通常伴うべき行為であるとも断じがたい面があることも否定できません。

 しかし他面、これを従業員の立場からいえば、研修旅行は気分転換としての要素もあることから従業員側で自発的に参加している面がありますが、業務との関連性が否定できない面もあること等から参加することが業務の一環と意識されていることもままあり、その限りにおいては拘束感を持つことがあることも否定できません。

 そこで、研修旅行において従業員が死亡した場合に「業務上の死亡」(労保法7条1項1号)といえるのか、具体的には「業務遂行性」があるのかが問題となります。

 「業務遂行性」を認定する上において重要な考慮要素は、災害時に従業員が「使用者の支配下」にあったか否かという点にあります。その判断をするに際しては、研修旅行の訪問先に業務と関係する施設への訪問が予定されていたか、観光と研修を目的とする訪問先への訪問との割合、研修旅行における費用の自己負担の有無及び割合、研修旅行参加者の研修旅行中の賃金支給の有無、不参加者の割合等を総合判断する必要があるでしょう。この点参考となる通達(運動競技に伴う災害の業務上外の認定について)は、[1]出張または出勤として取り扱われること、[2]必要な旅費等が事業主負担であり、労働者負担でないことを業務上災害の要件としています(平 12・5・18 基発366号)。

 この点、同種事案における判例は、本件旅行の訪問先が主に主要観光場所であったこと、研修を目的とした訪問先も予定表には土産物のショッピング先と記載されていたこと、旅行参加者への賃金支給についても前年までは実施しておらず、本件事故後に社長の指示により行われたこと、不参加者も31%の高率に及び参加の強制もなされてはいなかったこと等の理由から、「業務遂行性」はないものと判断しています(多治見労基署長(日東製陶)事件・岐阜地判平 13・11・1 労判818号17頁)。

3 本設問の場合について
 本設問においては、死亡した従業員甲は、任意参加のA社の研修旅行中に死亡したというものですから、甲がA社の支配下にないときに災害に遭遇しているものと解されるので、「業務遂行性」を欠くものとして労災認定の対象とはならないものといえます。

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