法律Q&A

分類:

休日の同業者グループ対抗ソフトボール大会に出場中の事故

弁護士 小林 昌弘(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.06.19

問題

私の業界では会社の所属する同業者グループがあります。私は、この同業者グループの親睦を深めるためのグループ対抗ソフトボール大会の担当者となり、出場メンバーを確保した上で、もちろん自分も出場しました。ところが、ゲームの最中に相手方選手の打球を受け、骨折をしてしまいました。これは労災の対象となるのでしょうか。

回答

 原則として労災の対象にはならない。
解説
1 運動競技に伴う災害の業務上外の認定に当たっての判断基準(平12・5・18基発第366号)
 (1)ソフトボール大会は、実務上いわゆる「運動競技」として分類されるものですが、運動競技に伴う災害の業務上外の認定についても、他の災害と同様に、運動競技が労働者の業務行為又はそれに伴う行為として行われ、かつ、労働者の被った災害が運動競技に起因するものである場合に業務上と認められることになります(したがいまして、運動競技に伴い発生した災害であっても、それが恣意的な行為や業務を逸脱した行為等に起因する場合には、当然のことながら業務上と認められません)。

 そして、ここでいう「業務行為又はそれに伴う行為」には、運動競技会において競技を行う等それ自体が労働契約の内容をなす業務行為はもとより、業務行為に付随して行われる準備行為等及びその他出張に通常伴う行為等、労働契約の本旨に則ったと認められる行為等を含みます。

 (2)運動競技会出場に伴う災害については、実務上、「対外的な運動競技会」と「事業場内の運動競技会」とに区別されており、ご質問のケースは同業者グループ対抗のソフトボール大会ということなので、「対外的な運動競技会」に該当するものと言えるでしょう。

 この「対外的な運動競技会」について労災と認められるためには、[1]運動競技会出場が出張又は出勤として取り扱われるものであること、及び、[2]運動競技会出場に関して、必要な旅行費等の負担が事業主により行われ(競技団体が全部又は一部を負担する場合を含みます)、労働者が負担するものではないことが要件とされています。

 ただし、労働者が個人として運動競技会に出場する場合において、上記[1]及び[2]の要件を形式上満たすにすぎない場合には、事業場の便宜供与があったにすぎないものと解され、「業務行為」とは認められません。

2 実際例(昭33・3・18基収第68号)
 実際例として、商工会議所主催野球大会に出場した会社のチームに所属していた者が、試合中に事故に遭ったケースがあります。

 このケースでは、[1]毎年2回定期的に市内一流会社が殆ど全部参加していたこと、[2]選手は監督と野球部長が選出し、上長の承認を得ていたこと、[3]1試合目が通常の労働時間中に行われ1日分の賃金も支払われていたこと、[4]2試合目は公休日であり賃金は支払われなかったが、日当に相当する額の食事、菓子等が支給され、代休を与えることも申し渡されていたことから、労災の対象とされました。

3 結論
 上記の実際例からもお分かりの通り、ご質問のケースが労災の対象とされるためには、出張又は出勤扱いとされ、交通費も支給されることはもちろん、大会への出場が業務命令によるものであるとか、そうでなくとも担当者として欠場することが事実上許されていない等の実質的な業務性が認められない限り、労災の対象にはならないと言わざるを得ず、越えるべきハードルはかなり高いといわざるを得ないでしょう。

 それゆえ、大変お気の毒ではありますが、ご質問のケースはおそらく労災の対象にはならないのではないでしょうか。

 治療費等については、就業規則や共済会規程による見舞金制度等を大いに活用したうえで、税務申告上の医療費控除の対象となるかどうかを確認することをお忘れのないようにしましょう。

関連タグ

身近にあるさまざまな問題を法令と判例・裁判例に基づいてをQ&A形式でわかりやすく配信!

キーワードで探す
クイック検索
カテゴリーで探す
新規ご相談予約専用ダイヤル
0120-68-3118
ご相談予約 オンラインご相談予約 メルマガ登録はこちら