法律Q&A

分類:

住居の意味

弁護士 筒井 剛(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.08

問題

当社の社員が、会社帰りに同僚と飲食した後、夜遅くなったため、そのままホテルに宿泊しました。ところが、翌朝そのホテルから出勤する途中、雪道に足を滑らせて転倒し、負傷してしまいました。当該事故が、ホテルから会社への最短コースをたどっていたような場合であっても、通勤災害とは認められないのでしょうか。

回答

 通勤災害とは認められない。
解説
1.住居の意義
 通勤災害として、保護されるためには、労働者が就業に関して、「住居」と就業場所の間を合理的な経路及び方法により往復している際の災害である必要があります。

 そして、「住居」とは、労働者が居住して日常生活のように供している家屋等の場所で、本人の就業のための拠点となるところいいます(昭48.11.22基発644、三原労基署長・竹内組事件広島地判平2.8.30労判573.56)。

2.家族と住んでいる住居以外に会社の近くに借りたマンションは住居といえるか
 家族と住んでいる住居が就業場所と非常に離れているため、就業の必要のために就業場所の近くに別のマンションを借り、通常そこから出勤してくるといった場合は、そのマンションが就業のための拠点となっているといえます。したがって、この場合のマンションは住居といえます。<  また、早出や長時間の残業のために別にマンションを借り、早出や長時間の残業の際にはそこか出退勤するような場合は、家族の住む住居とマンションの双方が住居となります。  さらに、転勤や交通スト、または長時間の残業などの理由で一時的にホテルなどに宿泊している場合は、そのホテルがここに言う住居となります。/dd>
3.自宅以外が住居と認められた例
 自宅以外が住居と認められた例の一つに、夫の看病のために、母親と交替で1日おきに長期病院に寝泊りし、その病院から徒歩で出勤する途中で、凍結した道路に足をとられて転倒し、尾骨部打撲の負傷を負った場合には、その病院が住居と認められたもの(昭52.12.23基収981)があります。

 さらに、看護婦である被災労働者が、長女の出産に際し、その家族(長女の夫と孫)やお産の世話をするために長期間(15日間)継続的に長女宅に泊まり込み、長女宅から勤務先に出勤する途中で、凍結した道路に足をとられて転倒し頭部に受傷した場合、長女宅は住居と認められました(昭52.12.23基収 1027)。

4.自宅以外が住居と認められなかった例
 もっとも、労働省(当時)労働基準局補償課編『通勤災害認定事例総覧』124頁によれば、マイカー通勤の労働者が、前日泊まった婚約者宅から婚約者(婚約者は、通常JRを利用していた)と一緒に自動車で出勤する途中で交通事故に遭い、頸部捻挫などの負傷を追ったというケースでは、当該労働者は以前にも残業などで遅くなったときは婚約者宅に宿泊し、かつ、出勤経路も会社へ行く最短コースであったとしても、被災労働者は勤務上の事情や交通事故などにより婚約者宅に宿泊したものではなく、もっぱら私的事情により宿泊したものであるから、この婚約者宅を当該被災労働者の就業のための拠点となる住居とは認められないと判断していますので、この点は注意が必要です。
5.設問に対する回答
 設問においては、従業員が宿泊したホテルは、本人の就業のための拠点ということはできません。

 したがって、本件のホテルは住居とは言えない以上、たとえ会社への最短コースをたどっていたとしても、通勤災害とは認められないのです。

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