法律Q&A

分類:

労災申請に会社が協力しない場合に労働者が採るべき措置

弁護士 小林 昌弘(小林法律事務所)
2004.06

問題

私は、会社で仕事中に負傷したため、労災の申請をしようと思い、会社にそのことを伝えたところ、会社からは申請には協力しないと言われました。どうすればよいでしょうか。

回答

 労働基準監督署に対し、会社に労災の証明をしてもらえなかった事情等を記載した文書を添えて、労災保険給付等の請求書を提出すればよい。
解説
1.はじめに
 労災に遭った場合で、会社に落ち度(故意・過失)があるときは、労働者またはその遺族は会社に対して損害賠償の請求ができます(民法709条、715条等)。

 しかし、会社に落ち度がないときは損害賠償請求はできませんし、会社に落ち度があっても、裁判になるとそれを証明する義務は基本的には労働者側に課せられており、費用、時間、労力を要します。しかも労働者側にも落ち度がある場合には損害賠償の額は低くなってしまいます(過失相殺)。

 そこで、労働者ないしその家族を援助するために、労災保険制度により療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷害補償年金、介護補償給付という各種給付が受けられるようになっています(労働者災害補償保険法、労働基準法等)。

2.労災保険給付等の申請手続き
 労働者が労働災害により負傷した場合等には、労働者等が休業補償給付等の労災保険給付の請求(労災保険法12条の8第2項)を労働基準監督署長に対して行うことになりますが、その際、労働者は労災保険給付等の請求書に必要事項を記入して労働基準監督署に提出します。請求書の用紙は労働基準監督署でもらえます。

 事業主は、労災保険給付等の請求書において、[1]負傷又は発病の年月日及び時刻、[2]災害の原因及び発生状況等の証明をしなくてはなりません(労災保険法施行規則12条の2第2項等)。

 ここで言う事業主とは、労働者の雇主(通常は会社)を言います。

3.事業主が証明を拒否した場合の措置
 ところが、事業主(会社)が上述の証明を拒むことがあります。

 事業主の証明は、上述した通り、[1]負傷又は発病の年月日及び時刻、②災害の原因及び発生状況等を証明するものであって、それが労災であることを証明するものではありません。労災であるか否かはあくまでも労働基準監督署が判断することです。この点を誤解している事業主(会社)が多いようです。

 しかし、事業主(会社)が証明をしてくれない以上は、その証明のないまま労災保険給付等の請求書を提出するほかありません。ただ、その場合でも、労働基準監督署に対し、会社に労災の証明をしてもらえなかった事情等を記載した文書を添えて提出すれば受理をしてもらえます。

 この文書は、特別な用紙が用意されているわけではなく、書式が決まっているわけでもありませんので、書き方などについては、まずは労働基準監督署に相談してみて下さい。実務上は、「事故証明不提出の理由書」などという表題を付けて、「事業者(会社)に証明を拒まれたため証明のないまま請求書を提出せざるを得ないが、請求書を受理して欲しい」という内容の文章を記載することが多いようです。

4.労災かくしになる場合について
 先ほど、事業主の証明は、[1]負傷又は発病の年月日及び時刻、[2]災害の原因及び発生状況等を証明するものであって、それが労災であることを証明するものではないと言いましたが、労災であることが明らかであるにもかかわらず労働基準監督署に対し故意に労働者死傷病報告を提出しなかったり、虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出すると、いわゆる労災かくしとして、処罰を含めた厳正な処分がなされます(労働安全衛生法第100条、第120条第5号)ので、事業者(会社)は注意が必要です。

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