法律Q&A

分類:

天災により被った災害

弁護士 筒井 剛(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2004.09

問題

業務中に発生した大地震によって工場の一部が倒壊するなどして、従業員が負傷してしまいました。このような場合、業務上の災害と認められるのでしょうか。

回答

 原則として、業務上災害とは認められない。
解説
1.天災地変と業務上災害
 従業員が業務中に大地震や水害などの天災地変に遭遇し、当該従業員が負傷したような場合には、業務上の災害と認定されるのでしょうか。

 業務中であることを重視すれば、業務上の災害とも言えそうです。

 しかしながら、労働基準局の通達では、「労災保険における業務災害とは、労働者が事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験法則上認められるものをいい、具現化したものと経験いわゆる天災地変による災害の場合にはたとえ業務遂行中に発生したものであっても、一般的に業務起因性は認められない」(昭49.10.25基収2950)として、原則的に業務上の災害とはいえないとしています。

 そして、その理由として、天災地変については不可抗力的に発生するものであって、その危険性については、事業主の支配、管理下にあるか否かに関係なく等しくその危険があるといえ、個々の事業主に災害発生の責任を帰することは困難だからとしています。

2.業務上の災害と認められる場合
 では、いかなる場合にも業務上の災害とは認められないのでしょうか。
 この点、上記通達は、当該被災労働者の業務の性質や内容、作業条件や作業環境あるいは事業場施設の状況などからみて、かかる天災地変に際して災害を被りやすい事情にある場合には、天災地変に際して発生した災害についても業務起因生を認めることができるとしています。
3.業務上の災害と認められる具体例
 では、ここで具体的事例に即して考えてみましょう。

 例えば、(1)作業現場でブロック塀が倒れたために従業員が負傷したような場合はどうでしょうか。
 この場合、上記通達は、屋外労働者にとっては自己の作業現場を取りまく四囲の状況が事業施設の状況といえるので、当該施設(塀)の特有な事情(補強のための鉄筋が入っていなかった)が地震とあいまって災害が発生したものと認められるのであればという条件のもとに、業務上の災害と認めています。

 次に(2)選別作業場が倒壊したための災害はどうでしょうか。
 この場合、上記通達は、柱とトタン屋根のみで囲いもないという当該選別作業場の構造の脆弱性による危険が地震とあいまって実現したものと認められるのであれば、業務上の災害と認められるとしています。

 さらに、(3)崖下の道路を運行するバスの運転手が落石によって災害を受けた場合はどうでしょうか。
 この場合、崖下を通過する交通機関は常に落石等による災害を被る危険を有しており、地震を契機としてその危険が現実化したものと認められるとし、上記通達は業務上の災害であると認めております。もっとも、実際には、崖や落石時の状況等を検討した上で、業務上外の認定を行うこととなると思われます。

4.非常に強度な地震等の場合
なお、関東大震災のように非常に強度な災害により負傷した場合には、やはり業務起因性は認められず、したがって、業務上の災害とは認められません。

 上記通達も、その天災地変が非常な強度を有していたためかかる要因の有無に関係なく、一般に災害を被ったという場合には業務起因性が認められないとしています。

 そして、その理由として、かかる大規模な天災地変の場合は事業主の支配・管理下の有無を問わず、一般的に災害を受ける危険性があり、業務上の事情が無かったとしても同じように天災地変によって被災したであろうと認められるからで、かかる場合の災害はその発生状況の如何を問わず全て業務起因性が認められないこととなるとしているので、注意が必要です。

 よって、ご質問のケースにおきましても、上記通達を参考に、個別具体的な状況に鑑みて、業務上外の認定をすることとなります。

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