法律Q&A

分類:

派遣労働と労災保険

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.10

問題

私は、これまである会社に長年勤務して参りましたが、今度この会社を円満退職して、ある人材派遣会社に登録して派遣労働者として働くこととなりました。派遣労働の場合、派遣先における業務に従事している際に労災に遭遇した場合に労災保険給付を受ける場合、どの事業を適用事業としていかなる業種の保険率による保険給付がなされるのでしょうか?

回答

 あなたは派遣労働者であり、あなたの雇用主は派遣元事業者ですので、労災保険関係は、派遣元事業について原則どおり成立しています。従いまして、派遣元事業を労災保険の適用事業として取り扱いますが、業種によって異なる保険率につきましては、派遣先の事業の作業実態によって決定されることになります。
解説
1.派遣労働者とその雇用関係
労災保険は、労働者を使用している事業に適用されます(労災保険法3条1項)が、労働者派遣は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下、派遣法という)」第2条1号で、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人の為に労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。」と定義されています。つまり、労働者派遣の場合、派遣労働者は、派遣先の事業主の指揮監督を受けて業務に従事はしますが、「派遣先事業主と派遣労働者との間には雇用関係が存在せず、事実上の指揮命令関係にとどまる」(昭和61・6・30発労徴41 号、基溌383号)のであり、派遣法2条1項の定義規定からも明らかなように、派遣労働者は派遣元事業主と雇用関係を有しているのです。従いまして、派遣労働者に関する労災保険関係は、派遣元事業について原則どおり成立しています。但し、派遣先事業主は、派遣労働者を直接に指揮監督することから、労災を防止するための安全衛生基準については特例的な責任を定めています(派遣法 45条)。
2.派遣法上の派遣元事業主の労働保険適用促進義務の存在
厚生労働省(当時の労働省)告示第137号「派遣元事業主の講ずべき措置に関する指針」第二の四において、「派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の就業の状況等を踏まえ、労働・社会保険の適用手続を適切に進め、労働・社会保険に加入する必要がある派遣労働者については、加入させてから労働者派遣を行うこと。ただし、新規に雇用する派遣労働者について労働者派遣を行う場合であって、当該労働者派遣の開始後速やかに労働・社会保険の加入手続きを行うときは、この限りでない。」とされている。そして、派遣元事業主は、派遣法35条により、労働者派遣を行うときに派遣労働者の労働保険の被保険者資格の有無等を派遣先事業主に通知するものとされており、これを受けて、派遣先事業主は、いまだ労働保険へ加入していない派遣労働者に対して加入を勧めることが求められているが、これはあくまで協力義務にとどまるものである。
3.保険率とその他の問題
では、派遣元事業を労災保険の適用事業として取り扱う場合、業種によって異なる保険率を決定する基準について、通達は、派遣先の事業の実態により決定するとしており、もし、作業実態が数種にわたる場合はその中でも主たる作業の実態により決定することとしております。それから、実際に労災事故が発生し派遣労働者が保険給付申請を行う際には、当然のことながら、派遣元事業主が証明を行うことになりますが、その場合には、災害の発生年月日、災害の原因及び災害の発生状況を明らかにさせるために、派遣先事業主が作成した文書を添付することが必要ですし、労働者死傷病報告書は、派遣先事業主が所轄の労働基準監督署長に提出し、その写しを派遣元事業主に送付することとされております(派遣法規則42条)。

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