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共稼ぎ夫婦のマイカー通勤での迂回・寄り道について

弁護士 小林 昌弘(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2002.08.26

問題

私は、マイカーで通勤していますが、共稼ぎであり、妻とは別の会社に勤めているため、妻と一緒に車に乗り、行き帰りに妻の職場に寄っています。途中で事故に遭った場合、労災の対象となるでしょうか。

回答

 夫婦共通の通勤経路における事故であれば、労災の対象となる場合が多いと解されますが、それ以外の場合には、自宅、夫婦各自の勤務先の位置関係・距離、事故発生現場の位置、マイカーを使う必要性等の事情により判断されることになるでしょう。
解説
1.労災保険の対象となる行為
 労災保険の対象となる災害には、業務災害と通勤災害があり、通勤経路での災害のうち業務の性質を有するものは業務災害の対象になります(労災保険法7条2項)。

 ご質問のケースは、業務の性質を有するものとは言えないので、業務災害ではなく、通勤災害と言えるかどうかが問題となります。

 そこで、以下、具体的事例を見てみましょう。
2.具体的事例

(1)妻の送り迎えの途中の事故
 [1]自己の勤務先と同一方向の450メートル先にある妻の勤務先を経由する場合について、特段の合理的な理由もなく著しく遠まわりとなる経路をとったものとはいえず、合理的な経路と認められるとして、通勤災害の対象となるとしたものがあります(昭49・3・4基収289)。
 一方、[2]自己の勤務先と同一方向の1.5キロメートル先にある妻の勤務先を経由する場合について、往復合計3キロメートル迂回することは、著しく遠まわりとなる経路をとったものであり合理的な経路とは認められないとして、通勤災害の対象とはならないとしたものがあります(昭49・8・28基収2169)。
 上記[1][2]の事例では、行きは「自宅→自己の勤務先(通過)→妻の勤務先―※ 1→自己の勤務先」という経路をたどり、帰りは「自己の勤務先―※2→妻の勤務先→自己の勤務先(通過)→自宅」という経路をたどる場合に、自己の勤務先と妻の勤務先との間([1]のケースは※1、[2]のケースは※2)で事故に遭ったケースでした。このように、妻の勤務先が自己の勤務先より先の方にあるケースで、自己の勤務先への通勤経路を通り越して妻の職場に向かうケースにおいては、迂回する距離がポイントとなっているようです。しかし、一概に距離だけを理由にすることには疑問が残ります。
 そうだとすると、夫婦の共通の通勤経路、つまり上記事例で言えば「自宅←→自己の勤務先」における事故の場合は通勤災害となる場合が多いと推察されます。

(2)妻を送った後に忘れ物を取りに自宅に帰る際の事故
 また、[3]自己の勤務先と途中まで同一方向で、その途中から片道2.5キロメートル横にそれたところにある妻の勤務先を経由する場合について、公共交通機関を使用することが不便であり、夫婦どちらかの運転するマイカーに同乗して通勤することの合理的理由があると認められること、忘れ物が就業に必要なものであれば、それを取りに引き返したことには就業関連性があることを理由に、通勤災害の対象となるとしたものがあります(昭50・11・4基収2042)。

 この事例は、夫婦の共通の通勤経路、つまり「自宅←→自己の勤務先」において事故がおきたケースでした。したがって、マイカー通勤の合理的理由が一番の理由とされていますが、事故の起きた場所も考慮してよいのではないかと思います。

(3)その他
 その他、共稼ぎ夫婦のマイカー通勤に特有の事例ではありませんが、[4]他に子供を監護する者がいない共稼ぎ労働者などが託児所、親せき等に子供をあずけるためにとる経路は合理的な経路となるとされており(昭48・11・22基収644)、[5]帰途で惣菜を購入する場合、クリーニング店に立ち寄る場合等、日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為は、当該行為自体は通勤からの逸脱・中断となるが、合理的な経路に復帰した後は通勤と認められるとされています(昭48・11・22基発644)が、これらのことは、マイカー通勤の場合にも当てはまり、電車・バス及び徒歩の場合と比べて移動の容易なマイカーの場合には、認められる行動範囲も広くなるものと言えるのではないでしょうか。

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