法律Q&A

分類:

社員食堂を利用せず、食事に出た社員が事故に遭った場合、労災となるか

弁護士 小林 昌弘(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2002.02.15

問題

当社には社員食堂があり、社員に対して積極的な利用を呼び掛けていますが、昼食事に当社の社外の飲食店まで足を運ぶ社員も少なくありません。このようなケースで、社外に食事に出た社員が事故でけがをした場合、業務上災害となるのでしょうか。

回答

 ならないと解されます。
解説
1 業務災害の意味
(1)法律上の意味

 お尋ねの業務上災害とは、法律上「業務災害」と言われ、「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」を意味します(労働者災害補償保険法(以下、労災保険法と略します)7条1項1号)。
 この労災保険法上の「業務上」という概念は労働基準法(以下、労基法と略します) I 上の「業務上」(労基法75条以下)の概念と同じとされています(労災保険法12条の8第2項)。

(2)行政解釈上の意味

 具体的な内容については、下記の行政解釈が参考になります。
 行政解釈上、「業務上」とは、「業務起因性」を意味し、「業務起因性」の第1次的判断基準が「業務遂行性」であるとされています。つまり、まず[1]「業務遂行性」の有無を判断し、[1]があると認められた場合、さらに[2]「業務起因性」の有無を判断し、[2]もあると認められた場合に、初めて「業務上」の要件を満たすことになるわけです。
 そして、[1]「業務遂行性」とは、「具体的な業務の遂行中」に限らず、「労働者が労働契約に基づき事業主の管理下にあること」を言い、[2]「業務起因性」とは「『労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあること』に伴う危険が現実化したものと経験則上認められること」を言います。つまり、「業務起因性」における「業務」とは「業務遂行性」を意味します。

2 業務災害の要件
 ご参考までに、要件とその具体的内容について、ご説明しておきます。

(1)業務遂行性

 「業務遂行性」の具体的内容は以下の3つに大別されます。

[1]事業主の支配下にあり、かつその管理(施設管理)下にあって業務に従事している場合
 事業場内で作業に従事中(作業に通常伴う用便、飲水などの中断を含めて)の場合です。

[2]事業主の支配下にあり、かつ、管理下にあるが、業務には従事していない場合
 事業場内での休憩中や、始業前・就業後の事業場内での行動の際の災害です。

[3]事業主の支配下にあるが、管理下を離れて、業務に従事している場合
 事業場外で労働しているときや出張中の災害です(出張中は、通常、交通機関や宿泊場所での時間も含めてその全般について業務遂行性が認められます)。

 結局、通勤途上(途中で用務を行う場合などは別)、および、事業場外での任意的な従業員親睦活動や純然たる私的行動(生活)中のものが、業務遂行性が認められない災害ということになります。裁判例では、社外の忘年会参加につき、強制はされていなかったので業務遂行性がないとされたものがあります(福井労基署長事件―名古屋高金沢支判昭58・9・21労民34巻5・6号809頁)。

(2)業務起因性

[1]上記[1]について
 原則として業務起因性が認められますが、以下の例外があります。
 自然現象(地震・落雷等)や、外部の力(自動車が飛び込んできた、狂人が刃物を持って飛び込んできた、等)、本人の私的逸脱行為(大工のけんかの事例として、倉敷労基署長事件―最一小判昭49・9・2民集28巻6号1135頁)、規律違反行為(酒に酔って作業、等)などによる場合は業務起因性が認められません。
 ただし、自然現象や外部の力も、当該職場に定型的に伴う危険であれば(例えば、隣接の工場が爆発した)、業務起因性があります。

[2] 上記[2]について
 労働時間中であれば業務起因性があるもの(生理的行為や歩行・移動行為等による災害)や事業場施設の不備・欠陥によるものでなければ、業務起因性が認められません(例えば、スポーツ活動による負傷)。

[3] 上記[3]について
 危険にさらされる範囲が広いので業務起因性は広く認められます(宿泊施設で酔って階段から転倒した事故につき業務起因性を認めた例として、大分労基署長事件―福岡高判平5・4・28労判648号82頁)。
 例えば、出張先のホテルで就寝中に焼死というのも業務起因性が認められます。しかし、積極的な私的行動による災害業務起因性がありません。
 (以上につき、労働省労働基準局編著・全訂解釈通覧労働基準法383頁以下、菅野和夫「法律学講座双書 労働法」第五版補正二版(弘文堂)357頁~359頁、367頁)

3 ご質問のケースの検討
 ご質問のケースを上記2(1)の[1]~[3]にあてはめてみましょう。

 上記ケースは、昼食時という休憩時間中の事故であり、就業時間外の事故になりますので、事業主の「支配下にある」とは言えないと解されます。

 ただ、社員食堂内という会社の施設内における事故であれば、事業主の「支配下にあり、かつその管理(施設管理)下にある」と言える余地もあるでしょうが、ご質問のケースは、社外の飲食店まで食事に出たケースですから、「管理(施設管理)下にある」とは言えないと解されます。

 また、ご質問のケースは、上記のように昼食時という休憩時間中の事故であり、就業時間外の事故になりますので、「業務に従事している」とも言えないと解されます。

 結局、ご質問のケースは、上記2(1)の[1]~[3]のいずれにも該当せず、「業務遂行性」が認められないため、さらに「業務起因性」の有無を判断するまでもなく、「業務上」であるとは言えないという結論になるものと解され、業務上災害にはならないと解されます。
4 通勤災害の可能性
 なお、「業務災害」とは別の類型として「通勤災害」というものがあります。

 これは「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」を言い(労災保険法7条1項2号)、「通勤」とは「労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除く」(同条2項)ものとされています。

 ご質問のケースは「住居」との間の往復で生じた事故ではないので、通勤災害にもならないと解されます。

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