法律Q&A

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就業規則はなぜ作る必要があるのか?(P2-1)

(1)労基法上の就業規則制定義務
 労基法は、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に就業規則の作成を義務付けています(89条)。
(2)就業規則の性格とその制定の趣旨
 就業規則の性格とその制定の趣旨につき、判例(秋北バス事件・最判昭43.12.25民集22-13-3459等)は、次のように説明しています。即ち、元来、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものであ」ります(労基法2条1項)が、「多数の労働者を使用する近代企業においては、労働条件は、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は、経営主体が定める契約内容の定型に従つて、附従的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされるのが実情であり、この労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至つている(民法九二条参照)ものということができる。/そして、労働基準法は、右のような実態を前提として、後見的監督的立場に立つて、就業規則に関する規制と監督に関する定めをしているのである。すなわち、同法は、一定数の労働者を使用する使用者に対して、就業規則の作成を義務づける(八九条)とともに、就業規則の作成・変更にあたり、労働者側の意見を聴き、その意見書を添付して所轄行政庁に就業規則を届け出で(九〇条参照)、かつ、労働者に周知させる方法を講ずる(一〇六条一項、なお、一五条参照)義務を課し、制裁規定内容についても一定の制限を設け(九一条参照)、しかも、就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならず、行政庁は法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる(九二条)ものとしているのである。これらの定めは、いずれも、社会的規範たるにとどまらず、法的規範として拘束力を有するに至つている就業規則の実態に鑑み、その内容を合理的なものとするために必要な監督的規制にほかならない。このように、就業規則の合理性を保障するための措置を講じておればこそ、同法は、さらに進んで、『就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となつた部分は、就業規則で定める基準による。』ことを明らかにし(九三条)、就業規則のいわゆる直律的効力まで肯認しているのである。」、と。
要するに、一言で言えば、労使の権利義務関係を明確化するということに就業規則の存在意義があると言えます。
(3)近時の就業規則作成の必要性
 なお、企業にとっての就業規則作成の効用は、経営の近代化、各種行政からの交付金取得の前提等経営・労務管理面でも多々ありますが、例えば、判例では、就業規則に懲戒規定がないと懲戒処分、懲戒解雇もできないことになっています(国鉄札幌運転区事件・最判昭和54.10.30民集33-6-647、P7-6参照)。更に、後述の労働条件の変更が必要になったような場合に、個別の個々の労働者との合意がなくとも、就業規則の改正の方法で労働条件の不利益変更ができることが挙げられます(P2-5参照)。

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