法律Q&A

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みなし労働時間制とはどういう制度なのか?(P4-9)

(1)みなし労働時間制の意義
 みなし労働時間制とは、従業員の労働時間について、厳密に実労働を算定することなく(P4-2参照)、実際の実労働時間にかかわらず、所定乃至一定の労働時間勤務したものとみなして定額の賃金を支払う制度をいいます。これには、下記の通り、労基法に定められた、[1]事業外労働、[2]裁量労働の場合と(法定みなし制)、[3]労基法の定めに拘わらず、いわゆる営業職や年俸制社員に利用される場合(法定外みなし制)があり、各制度によって意味・要件・法的効果が違っています。
(2)法定外みなし制
 先ず、法定外みなし制につきみてみますと、管理職以外の平社員の場合には、法定時間外労働や法定休日労働となる場合は、いずれもいわゆる36協定が締結されていることを前提にして(P4-3参照)、一定の基準外賃金相当の(法定外)みなし手当が支払われている場合に、そのみなし手当でカバーされる範囲内の残業や休日労働・深夜勤務については問題ないのですが、これを超えた残業・休日労働等がなされた場合には、超えた部分に対応して、各々の基準外賃金を支払わねばなりません。つまり、労基法は、所定の割増賃金を下回らない限り、25%(休日35%)の割増賃金に換えて一定額のみなし残業・深夜・休日労働手当(みなし手当)を支払うことを禁じてはいません。裁判所もこのようなみなし手当に関して、同様の判断をしています(オーク事件・東京地判平成10.7.27労判748-91等)。但し、従来から支払われていた固定給を基本給と営業手当に分けて名目だけみなし手当としたような場合は勿論、営業手当を新設しても、その代わり基本給を減額したりした場合には、それらは割増賃金の実質なしとされ、割増賃金を免れるための脱法行為として、そのような規定は無効とされています(駒姫交通事件・神戸地判昭 62.2.13労判496-77)。無効とされた場合、労基法通りの割増賃金の支払いを、しかも営業手当と基本給を合わせた固定給全体に対する割増賃金の支払を請求できる可能性があります。又、みなし手当の額が労基法通りの計算による割増賃金の額を下回っているかどうかを確認できないような規定は無効とされることが多くなっています(徳島南海タクシー事件・最決平11.12.14労判775-14等)。
(3)事業場外労働・裁量労働の場合
 二つの法定みなし制の内、裁量労働制については、別に触れますので(P4-10参照)、ここでは事業場外労働(労基法38条の2)について説明します。先ず、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」とされる場合があります(同条1項)。この場合は、仮に実際の労働時間が算定できる場合で、その時間が法定時間を超えていれば割増賃金請求権が発生します。
これに対し、事業場外労働における時間外労働に関する労働者の過半数代表者との労使協定が結ばれ、法定労働時間を超えて労働する時間数が協定され、同協定が所轄労働基準監督署長宛届け出られれている場合には、実際の時間外労働が各協定時間を超えたとしても時間外労働に対する割増賃金支払の問題は発生しません(同条2項、3項)。しかし、この事業場外労使協定の適用を受ける労働者の労働実態が事業場外労働の要件を満たすことが必要で、その実態がない場合には、みなし時間による制限は及びません。例えば、判例でも(ほるぷ社事件・東京地判平9.8.1労民48-4-312)、展覧会での絵画の展示販売が、業務に従事する場所及び時間が限定され、会社の支店長等も業務場所に赴いており、会場内での勤務は顧客への対応以外の時間も顧客の来訪に備えて待機しているものであること等から、就労の実態が労働時間を算定し難い場合に当たらないとされています。

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