- (1)復職に関する下級審判例
- 多くの就業規則では、私傷病休職の休職期間中に傷病が治癒すれば、復職となり、治癒しなければ自然(自動)退職又は解雇となる旨の規定が定められています。そこで、休職期間の満了時に復職可能か否かをめぐり争いが起こりがちです。今までの下級審の判例では、原則は、従前の職務を通常の程度に行える程度の健康状態に復したか否かにより判断されるとされていましたが(アロマカラー事件・東京地決昭54.3.27労経速1010-25等)、当初は軽易作業に就かせればほどなく通常業務に復帰できるという程度の回復であればそのような配慮の上の復職が義務付けられることもありました(エール・フランス事件・東京地判昭59.1.27判時206-147)。
- (2)最高裁の服飾可否の判断基準
- ところが最高裁は、企業に対して、復職時の配転等の職務の負担軽減措置による雇用保障等の配慮をより強く求める判断を示しました(片山組事件・最判平 10.4.9労判736・15。判決)。判決は、「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である」と判示しました。
判決を踏まえると、今後は、少なくとも、職種の限定なく採用し、配転可能な部署を持つ一定以上の規模を持つ企業においては(P3-2参照)、本人が軽減業務での復職を求める以上、以上の基準に従った復職の可否が判断されることになり、私傷病休職後の復職の可能性は高くなったと言えるでしょう。