- (1)通勤災害制度
- 労基法の労災補償制度を踏まえた旧来の労災保険制度では、電車通勤・マイカー通勤途上の交通事故などについては、例外的に、出張中の場合を除いて、企業の送迎バス乗車中での事故や工場構内での企業施設に起因するような場合以外では、業務起因性はないとされ、労災保険補償給付の対象となっていませんでした。しかし、通勤途中での交通事故等への保護の必要が高まり、通勤途中の危険も業務に関連した災害として、現行の労災保険制度では、その中に通勤災害制度を設け、基本的に労災補償給付と同様の保険給付(P6-1参照)がなされています。
- (2)業務上災害との相違
- 以上のように通勤災害は労災保険による保険給付の対象となることが定められていますが、業務上の災害ではありませんので、労基法上は前述の業務外災害となり、解雇規制等の保護はありません(P6-2参照)。なお、給付面での違いは、労災保険の休業補償給付が支給されない最初の3日間について、通勤災害では労基法上の休業補償(同76条)が求められない点と療養給付について一部負担金がある点のみです。
- (3)通勤災害の認定要件
- 通勤災害と認定されるためには、先ず、災害に通勤起因性が必要とされ(労災保険法7条1項2号)、災害の発生が「通勤」の途上でなければなりません(7 条2項)。そこで労災保険法にいう「通勤」と認められるためには、「就業に関し」、「住居と就業の場所との間を」、「合理的な経路および方法により往復」していたことが認定されなければなりません。また、原則として中断や逸脱があってはならず、前述(1)で触れた例外的な業務の性質を有するものも除かれます。この場合には、業務上災害として補償されます。これらの要件の具体的判断基準については様々な行政解釈・判例が出ています(菅野和夫「労働法」第5版補正2版367以下等参照)。