法律Q&A

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いわゆる過労死をめぐる問題とは?(P6-6)

(1)過労死問題とは
 脳血管・心臓疾患などによるいわゆる過労死の従業員にとっての法的問題としては、[1]高血圧症などの基礎疾病を持つ場合に過労死した場合、どんな条件があれば業務上災害と認定されて労災保険給付がもらえるかということと、[2]過労死に関して従業員やその遺族が企業に対して損害賠償を求めたいとき、どのような場合に請求できるのかという二つの問題があります。
(2)過労死の労災認定基準
 厚生労働省は、過労死の認定基準につき、横浜南労基署長事件(最一小判平成12.7.17労判785-6)を受け、最近、新たな通達(平成 13.12.12基発第1063号。過労死新認定基準)を示しました。今までの認定基準からの主な改正点は、[1]脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、長期間にわたる疲労の蓄積についても考慮すべきであるとし、[2]長期間の蓄積の評価期間をおおむね6ヶ月とし、[3]長期の業務の過重性評価における労働時間の目安を示し、[4]業務の過重性評価の具体的負荷要因として、労働時間、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交替制勤務、深夜勤務、作業環境(温度環境、騒音、時差)、精神的緊張(心理的緊張)を伴う業務等やそれらの負荷の程度を評価する視点を示した点です。
特に注目すべきは、[3]の過重性判断での労働時間に関し、「発症前1か月ないし6か月にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが...発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務との関連性が強い」と具体的な基準(労働時間基準)が示されている点です。
(3)過労死損害賠償請求事件の増加と認容例の相次ぐ出現
 当初、前述の労災認定に限られていた過労死問題は、後述の過労自殺と同様(P6-7参照)、企業の健康配慮義務の高度化とあいまって、今や、ほぼ確実に過労死を招いた企業の健康配慮義務違反を理由とする損害賠償請求問題の発生を伴う状況にあるといって良いでしょう。既に、健康診断の結果等に応じた労働環境の整備・業務の軽減ないし免除などの健康配慮義務違反による賠償責任を認める判決も少なからず出ています(最近の例として、例えば、従業員が長時間労働により増悪した高血圧症を原因とする脳出血により死亡したことにつき、会社に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求が認められた、システムコンサルタント事件・東京地判平成10.3.19判時1641-5、同控訴事件・東京高判平成 11.7.28判時1702-88等参照)。
(4)過労死乃至過労自殺の労災認定申請への企業への対応上の注意点
 過労死の労災認定の場合は、直接的には遺族と労基署との労災認定をめぐる争いの問題なのですが、結局、前述の通り、過労死等した従業員の勤務状態、「過重負荷」の有無が問題とされ、企業に対して遺族と労基署の双方から当時の勤務状態の証拠調べに協力が求められることになります。特に遺族の側は企業に対して、勤務状況報告書などに関する証明の依頼を求めることになります。そこで安全配慮義務違反の賠償請求の多発化の流れの中で、企業は、従前以上に慎重な対応を取るようになっています。
他方、多くの企業も、上記証明依頼に対して単に防御的に対応するだけでなく、損害賠償請求へのリスクヘッジとして、自衛のため過労死等に対応した災害補償規定等の整備やその補償原資確保のための損保や生保加入をしています。そこで、被災従業員や遺族等としても、過労死に際しては、企業がこのような保険加入等の対応をしているか否かの確認をした上で、損害賠償請求についても、状況により柔軟に対応し、早期の示談による解決を図ることも検討されるべきでしょう。

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